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変換なしの雑食夢

ran

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灰桜

「矢張り奥方様のところには御渡りになりませんね。」
「毎夜毎夜後側室様のところにお渡り遊ばして…其れもお激しい限り。」
「ねぇご存知?」
「何?」
「私聞きましたの。この婚姻。殿には不本意な話だったそうですよ」
「そうなの?」
「でなくては豊臣の姫のご婚礼の後に当てつけの様な側室様の寵愛なんてないでしょう?」
「お綺麗で才能豊かな方ですけれども…お強いわけでもありませんしね」
「比べてはなりませんが雑賀様の様とか前田の松様や魔王の妹君みたいにお美しい上にお強く遊ばさないと」



というのを聞いたのですと目の前の侍女が憤慨して言う。佐和山で出会った中で一番表情豊かな彼女が私の代わりに怒るものだから逆に私は苦笑してしまう。其れがあまり良くないらしい。



「良いのですか?側付きの侍女から婢女まで。好き勝手申しておりますよ」
「事実ですから。貴方もそう憤りませんように」
「ですが!私は悔しゅうございます」
「如何いたしましたか?」
「奥方様は側たちのどれと鑑みても劣っておるところなどございません!ですのに…殿はお渡りになりませんし。この様なところに押し込められる所以などどこにもないのです」
「ふふふ。ありがとうございます」
「お笑いあそばされるところではないのですよ」
「私の下の者達も不満が溜まっておいででしょうね。ならば移動を募って下さい。側の方に参りたい方は手を尽くしましょう」
「奥方様?!」
「彼方は迚も忙しいでしょう。最近殿の衣装を御整え遊ばすのも彼方。側の方々にも頼まれていたのです。私のところのものは…いいえ。貴方も。行きなさい。」
「は?」
「側の御殿の総指揮者がいなく混沌としている様ですから。彼方は日陽の局。他国に侮られるのも甚だ遺憾であります。刑部様にそうお伝えいたしましょう」
「お、お待ちくださいませ!あなた様の身の回りの世話は?誰かするのですか?」
「裁縫も何もかも己の事なれば出来ますよ。諸事の時のみしか人手は要らないのが今の此処です。此処は月帳の局。人形の間に人は要りませんよ」
「ですが!私だけでも」
「私は貴方の手腕を素晴らしいものと思っております。ですから貴方がいかなくてはならないでしょ?」
「…殿が、お許し致しませぬ」
「そこは、そうね。刑部様の手腕の見せ所ね」





そう言うと侍女は憤った顔をして平伏する。殿と刑部様に文を書きますから刑部様にお届けくださいと言って私は文を書く。
あれから。一月経つ。矢張り殿は私の事を気に入りはしなかったのだろう。其れはもとよりわかっていた。側もお気に入りあそばした様で安堵した。私のこれからの仕事は此処で唯、息をしている事なのだろう。兄上から下賜された道具として。必要に応じて笑い着飾れば良い。人づてに聞いた結納の時おっしゃられた様に。
私はそうして私で無くなるのだろう。其れは其れで良いのかもしれない。人並みの幸せなんて兄上から道具として見られたその時より、得る事はできないのだから。





「また無理難題をいわしゃった」
「如何した刑部?」
「ぬしの奥は我を過労死させる気よ」
「奥、が?如何した?」
「気になるのなら自身できかしゃれ」
「…其れは」
「やれ三成。ぬしこそ如何した?あれ程恋い焦がれた姫が側にいるのに結婚前より合わず終いよ。」
「私の事は良い。今は奥、の話だ。」
「言いにくそうよの。まぁいい。側の方に侍女を送る許可をぬしから取って欲しいとの事よ」
「は?」
「外交の社交場もぬしの身の世話も全て彼方故との事。良いか?」
「あの方の身の世話は誰がする気だ!」
「自身ですると。にしても湖影とあるが?」
「彼方の局の名をそうした」
「…」
「如何した?」
「いや、な。あの方のこと。存じ上げている気がするが…まぁいい」
「?」
「其れより可を出しておく。」
「…しかし」
「事実側の方は人手が足りぬ。一時的によ」
「…刑部に任せる」










灰桜






「奥方様」
「?」
「何かありましたら直ぐに」
「わかっていますよ。殿をお願い致します」
「はい」





そして誰もいなくなる。それでいい。私の側には何も残らなくていい。
兄上に文を書かなくてはならない。安心してください。お言いつけは守っておりますと。

不意に外を見る。日が沈む方向からすれば彼方は西、かしら?兄上や半兵衛がいる。

帰りたい、のだろうか?それすらわからない。

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