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変換なしの雑食夢

ran

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26

あ、と思わず声を出して急いで口を塞ぐ。父上を見れば少し戒める様にこちらを見る。すいませんとだけ言って文字を書き連ねていくが先ほどの光景が忘れられない。文章を紡ぎ終えてこちらを見ていた父上が先ほどとは違う顔をなさる。成る程、書き損じたと思われたのだろう。何時もは竹中殿がされていたと聞くに私では心もとないらしい。


「…どうかしたか?」
「いえ」
「疲れたか?」
「大丈夫で御座います」
「…少し休め」
「いえもう少しで出来ますので。」
「すまぬな」
「いいえ」
「姫」
「戦況は…竹中殿が行っておりますから大事ないでしょうが」
「そうよな」
「出来ました。御見聞を」
「うむ」
「…」
「で、如何した?」
「彼方に」
「?」
「治部が居ました」
「そうか」
「また何かあったのでしょう。暴れております」
「止めぬのか?」
「あれの矛先は口さがない男故。何かあったのでしょう。左近求めない様ですし。…治部は短気ではあれど浅慮ではありません。無闇矢鱈に殴ったり致しませんよ。多分、刑部の事でしょうね。父上や竹中殿のことなら抜刀しておりますよ。」
「うむ。」
「以前、刑部の悪言に抜刀したら刑部が大層怒りまして。理由を聞くと死地に追いやるのは我の務めと。ふふふ。あの二人は仲が良い。」
「よく見ているな」
「皆ここが好きなので御座います。平常を知らなければ異常を知ることはできません故、自然と」
「そうか」
「?」
「姫は治部を如何見る?」






そう言われて文を折る手を止める。真意が計りかねると思案して、表書きを書く。すると姫と催促されるので思わず笑ってしまう。




「何故笑う?」
「治部と言う男は一言で表すなら忠臣では御座いませんか」
「う、む」
「父上の腕となりて働き、それを至上の喜びとしている様な男で御座います」
「…」
「父上?」
「お前は、如何思う?」
「私で、御座いますか?」
「大衆に聞いても皆、そう答えよう。そうではない。お前は、如何思う」
「治部は」
「うむ」




美しい水の中にしか住めない魚のような男で御座いますと言えば微妙な顔をされる。得心がいかないのだろう。致し方ないなぁ。




「一途で清貧。欲しがらず、求めておらぬ。ただ、父上が居ればそれで良いので御座います。」
「確かに」
「父上の掌の上でしか生きられないのでしょう。否、生きる気が毛頭ないので御座います。故に父上が死ねと命じれば嬉々として死ねる男でざいます。故に痛々しいまでに真っ直ぐなので御座いましょう」
「…」
「人は他と違うものを尊敬するか排除するかのどちらかで御座います。治部は父上にそれを見、畏怖と羨望何より崇拝の念を生み出したので御座いましょう。」
「そうか」
「至極個人的なことで言えば」
「うむ。」
「食べること寝ることを蔑ろにしすぎで御座いますので良き婦女を娶らして、真っ当な生活をして欲しいと思いますが、…父上?」
「いや、そのだ。」
「?」
「あれについて行く女がいるのか」
「其処は父上と竹中殿との力量にかかっております。早く娶って子を作れと言えば良いのですよ。どうせ一年の大半は顔を合わさないので御座いますから。殴るな蹴るなと言い含めておけば万事解決致しましょう」
「…」





からんころん 番外編






「刑部」
「ん?姫」
「治部は?」
「部屋に謹慎中よ」
「左様か。ならば」
「聞かぬのか?」
「見えていたからな。誰かの悪言だろう?」
「ひひひ」
「これを治部に」
「ん?」
「侍女が恐ろしがって持って行ってくれぬのだ。冷やせと」
「伝えておこう。にしても」
「ん?」
「ヌシが持って行かぬのか?」
「ああ」
「左様か」
「刑部」
「ん?」
「私も治部と刑部様な関係の友が欲しいな」
「我はぬしも三成と同じくらい大事よ」
「っ!刑部!!!」
「やれ、抱きつきりゃるな。面倒なことに」
「…姫様」
「治部!」
「刑部…何故裏切った!!!」
「…落ち着きゃれ。これを姫から預かっていたところよ。」
「抱きついてまでか!」
「我には可愛い許嫁がおる!」
「いや、何の話だ。それより」
「っ?!姫様。手を」
「痛々しいな。冷やしたか?」
「今より書物を」
「代わる。冷やせ。」
「姫様の手を負わずらしするなど!」
「代わる!冷やせ!治部!!!」
「は…」
「そなたはそなたを愛え。」
「は?」
「其方と刑部は私の大切な人なのだから」
「!!!」
「…いいな。刑部」
「我も手伝おう」

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