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変換なしの雑食夢

ran

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21

「こほっ」
「姫様?!風邪でございますか?!」
「いや違う」
「大事をとってお休みになられたら」
「大丈夫だ。ああ、おあや。これは竹中殿に。これは徳川殿に。」
「はい。」
「治部殿は、これを。今度の戦の兵糧だが…足りるだろうか?」
「充分かと…」
「そなたにそう言ってもらえて助かるよ。が」
「…」
「顔には出てるな。無理があるか?」
「…はい」
「そうか…。修正を教えて頂きたい。頼めるだろうか?」
「はい。勿論でございます。」
「まだまだだな。迷惑をかける」
「そのような」
「…こほっ」
「やはり」
「大事ない大事ない。」
「…」
「後詰の計算は難しい。治部殿は前線にも長けて後衛も長けているのだから流石だな。」
「ありがとうございます。あの」
「?」
「残りは私がしておきます。どうか少しお休みください」
「治部殿」
「…」
「これをしろとおっしゃたのは他でもない、竹中殿だ。其方のように時間のないものをつけてくれたのはありがたいことだが裏を返せばそなたの仕事も滞っているのだろう?これ以上の迷惑はかけられない」
「迷惑など…」
「其方は父上の臣。早くお返ししなくてはな」
「私は」
「…」




さらさらと筆を運びながら時折咳き込む後ろ姿を見ておろおろしてしまう。修正をお伝えして、お直しになると仕事はほぼ終わったのに何故か筆を片付けられない。苦笑しながら宿題だと言って紙を見せられる。



「あの」
「治部殿はもう良い。自分の仕事に戻ってくれ。」
「しかし」
「治部殿はあのかしかしだな。」
「は?」
「いや、いい。おはな」
「はい」
「治部殿をお送りいたしなさい。」
「わ、私がですか?」
「ああ。ついでに皆に休むように言ってくれ。菓子がある。」
「は、はい」
「姫様」
「治部殿もご苦労。」
「…は」





薄く笑って再び視線を戻される。目の下の隈が薄っすらと見えて居た堪れなくなる。姫様とお声をかけようとして席を外した。




「やれ、三成」
「…」
「三成」
「なんだ?」
「そんなに墨を擦らずともよかろう」
「…?!」
「ひひひ。気がつかなんだか?」
「…」
「本当に如何した?」
「いや」
「風邪でもひいたか?」
「…姫様が」
「左様か」
「左様とはなんだ!」
「ぬしは如何したいのか?と思うてな」
「?」
「後継の姫様として扱うには随分と執着しておるが」
「…」
「誠に惚れたか?」
「それは…」
「ひひひ。言えぬか?」
「恐れ多い」
「ならば姫と一家臣として付き合うか」
「何より私は嫌われている」
「そうよな」
「…」
「ぬしは誠わかりにくい。先だっての戦でも惚けよって。立ちすくむ玉でもあるまいに。恐れが勝ったか?親愛と恋慕の違いを様やわかったのかえ?」
「自分でも嫌になる。」
「真に大切なものには脆いものよ。以前明星と言ったが…そんな生易しいものではないだろう?星は独占できるものではないと人は元より知っておるからな。諦めもつこうが…男と女として惚れたのならば無理であろうなぁ」
「…この気持ちが恋慕ならば」
「ん?」
「なんで酷い感情か。報われぬ、邪な心に左右されるとは」
「ひひひ。本に自覚しよったか」
「…だからと言って変わらん。何も。あの方への思いは真逆に伝わっている。」
「致し方ない。皆そうおもおう」
「…自業自得だな。だが」
「?」
「やはり気になる!」
「や、やれ。三成如何致した?」
「お叱りを覚悟にお休みを申し出る!」
「本に不器用よな」





すくりと立って姫様の部屋に向かう。
お叱りも甘んじて受ける覚悟で来たものの近づくにつれ小さな咳が聞こえてくる。




「姫様」
「…」
「…?!申し訳ございません。失礼いたします!」




返事どころか気配すらない。背筋を冷たいものが走る。
開いた障子の先には先ほどより顔色の悪い姫様が蹲っていた






「姫様?!…すごい熱だ」
「ん…」
「誰か!!」
「は、何事でございますか?」
「床の用意をしろ。医師の手配も」
「は、はい」




すぐに引かれた布団の上に姫様を眠らせる。ただの過労だろうと言われたもののこのように苦しそうな姫様を見て心が痛む。




「ん…」
「飲み水と桶と手拭いを」
「はい」
「じ、ぶ?」
「?!姫様。気が付きましたか?」
「私は」
「まずは寝てくださいませ」
「…治部が優しい、なぁ」
「姫、様?」
「これは夢か?ならば良い夢だな」
「夢でも何でも。貴方様さえご無事で安らかなれば。この三成。何もいりませぬ」
「ふふふますます夢だな」
「冷たいですが」
「ん…治部や治部。」
「はい」
「ありがとう」
「礼など良いのです。1日でも早くお元気に」
「ん?ああ。そうか。そうだな」
「姫様?」
「…じ、ぶ…」
「寝てしまったのか?」








からんころん








「やれ三成」
「刑部か?どうした」
「姫の具合はどうかえ?」
「もう熱も引かれた」
「にしても、よくぬしに看病させたな」
「渋っておいでだったがな。目を離すと無理をなさる故。無理矢理だ」
「左様か」
「…刑部殿?」
「やれすまぬすまぬ。起こしたか?」
「いや、微睡んでいただけだ。気になさるな」
「羽織を」
「あ、ああ。ありがとう」
「いえ」
「三成に感謝しりゃれ。ヌシが行き倒れているのを見つけ介抱し続けたのだからな」
「したくてしただけだ。いらぬことを言うな」
「本当に…なんと言って例にすれば良いか…ごほごほ」
「姫様?!お水を」
「すまぬ。刑部殿もうつしてはならぬからな」
「平気よ平気。にしても、殿はもうよかろう」
「?」
「いちいち面倒よ。他人でもあるまいし」
「刑部」
「ん。それでよかろう。三成も」
「?!」
「治部で良いと再三言っているのだが」
「だがな、それは。」
「なぜいかぬ?」
「父上の忠臣に」
「ぬしの臣でもあろうな。」
「それは違う。治部殿は父上の」
「私は豊臣の臣でございます。故に名など呼び捨ててくだされば構わないのです」
「…治部」
「はい!!!」
「っ」
「ひひひ。愛いのう」
「刑部」
「これは蜂蜜に果物よ。喉に良いものをそろえた。」
「…ありがとう」
「林檎を切りましょう」
「刑部も治部もともに食べよう。」
「あいわかったわかった」
「はい」

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