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変換なしの雑食夢

ran

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19

紅葉狩りは如何でしたと聞かれたので美しかったよと返しておく。手に持つ絵巻物を一目見てため息をつくのを忘れずに。贈り物ということ。高いだろうにといえばそれはそうでございますねと当たり前のように言う。にしても、伊勢物語か源氏物語か?と尋ねると源氏物語と言うので笑っておく。子女のたしなみが必要だった自分に読んだよと付け加えて。


「今では必要ないと?」
「今必要なのは力と軍略かな」
「…」
「にしても今日は贈り物が多いなぁ。」
「それは」
「美しいものだが私には過ぎたものだ。丁重にお返ししなさい。」
「逆に角を立てますよ」
「ならばそれに見合ったお返しと贈り物は必要ないという礼状を。」
「はい」
「文は私が書こう」
「いえ、ですが。」
「ああそうだ。そろそろ妹の裳着の儀だ。祝いの品を考えないとな」
「!」
「如何した?」
「貴方様の!すっかり失念しておりました」
「私はせぬよ」
「は?」
「そう申された」
「…弟にでしょうか」
「そうだな。元服の儀は男のようにすると。なぁさよ」
「なんですか」
「私は髷を結うのかな?」
「…少々用が」
「今は茶会中故後にしなさい。」
「なぜそんなに冷静でいられるのです。」
「此処に来た折に色々考えが変わることが多くてな。弟君のおかげだな」
「!」




そう言って私は文を書く。丁寧な感謝と拒絶の手紙。これを添えよという時にはすでにさよはいなくなっていた。






「失礼します」
「ああ。石田殿。」
「これを半兵衛様から預かってまいりました。」
「ありがとう。…そう言えば」
「?」
「大谷殿はあの後直ぐにお送りいたした故。ご心配召されるな」
「いえ、その」
「お二人は仲がよろしいなぁ。」
「…姫様は」
「ん?」
「お加減は」
「大丈夫。ありがとう」
「っ」
「石田殿?」
「最近、道場にも講義にも出られませぬので」
「ああ。それで。父上に止められてな。邪魔になっているだろうから。」
「のような?!いえ、秀吉様のお言葉ならば…」
「ふふふ」
「姫様?」
「いや、なに。なんでもないよ。」
「…」
「下がっては如何か?ご多忙だろう?」
「え、いや。」
「私もちと所用が終わっておらん。退室するのでな」
「お供いたします」
「いや、いい。着物屋と話すだけ故」
「着物?」
「裳着の儀でな」
「姫様の?!それは」
「ないない。私に必要ないのでな。私は致さぬだろう。妹のだ」
「…致さないのですか?」
「必要ない」
「ですが」
「?」
「いえ」



そう言って何か言おうと思案している石田殿の顔を見ていると侍女が入ってくる。着物屋が来たとのこと。すまぬなと言って席を立つと困ったような顔をするので私は笑う。




「失礼するよ」
「は、い」
「…昔と違って歯切れが悪いなぁ」
「!?」
「前から言っている。無理なら他のものを使いなさい。」
「無理では」
「そのような苦虫を噛み締めたような顔をして。石田殿が私を嫌いなのは周知の事実。」
「は?」
「役とて仕方ない故。諦めてくれ。ではな」
「…きら、い」







からんころん 番外編







嫌いなのだろうと思ったのはいくつか目の戦場で死にかけそうになった時だ。助けてくれたのは大谷殿で近くにいた石田殿は少しも動くことがなかった。



「この色は如何でしょう?」
「ん、よく似合うだろうよ。化粧道具も一式。頼むよ」
「心得ておりまするが如何でしょう?揃いで姫様も」
「いらぬいらぬ。」
「そうでございますか?」
「私に用意するのならその分妹に。あの子は美しいからなぁ」
「はい」
「では、頼んだよ」




そう言って席を立つ。今日は動いてばかりだなと思いながらもう出ている月を見る。月見はできなかったなぁと思案して視線を戻すと竹中殿がいて道を譲る。




「やあ」
「…」
「御茶会にも参加しなかったね。体調が思わしくないかな?」
「いいえ」
「…そう。あのね」
「さよが裳着の儀はじめいろいろ申しましたでしょうが、私には必要のないことでございます。」
「え?」
「それより妹と大谷殿の祝宴をお許し頂きましてありがとうございます」
「ん。それは僕も考えていたことだから。いや、そうではなくて!」
「では、失礼いたします」
「いや、ちょ…はぁ。だめだ。完璧に嫌われているな。」

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