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変換なしの雑食夢

ran

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暗の妹と三成 4

「今から時間は空いているか?」
「今からですか?」
「ああ」
「少しお待ちくださいませ。上に聞いてみないと」
「刑部からは許可を貰った。侍女頭というものの許可もだ」
「そうなのですか?」
「刑部のところへ行って話している時に来たからな。刑部が話をつける前に直ぐ許可を得られた。」
「では大丈夫なのでしょうね。あと」
「?」
「どの様なご用件でございますか?」
「ああ。馬には乗れるか?」
「少しなら。余り上手ではありませんが」
「なら私と共に乗れば良い。城下に行くぞ」
「ああ。このあいだの」
「半兵衛様から恐れ多くも休息を取るように言付かった。」
「休息?」
「?」
「治部様」
「何だ?」
「お急ぎで入り用なものはございますか?」
「いや…ないが」
「ではゆるりと致しませぬか?」
「?!」
「あ、城下に行きたくないわけではなくて…あのですね」
「っ」
「お顔の色が優れません」
「な」
「あ、ご無礼を。」
「いや良い。だが…」
「また機会はありますよ。少し横になってください。刑部様もご心配されておいででした」
「…」
「治部様?」
「では私の」
「?」
「私の部屋に、来るか?」
「治部様のですか?」
「ああ」
「…私がいればかえって煩わしくありませんか?」
「ない」
「ですが」
「…誰かがいないと仕事を、してしまう…から」
「!」
「見張っていて、欲しい」
「ふふふ」
「笑うな」
「そうでしたね。治部様の殿下好きは天下に鳴り響きておりました。ふふふ」
「…」
「茶櫃とお菓子を頂いて参ります。一緒に参りますか?」
「ああ」
「今日は治部様のお部屋に遠出ですね」




そう言うと私の前を歩いて行かれる。この人は本当にわかりやすいわかりにくさを抱いて生きられているなあと思う。今まであったどの方よりも繊細で儚い。何よりとと思った瞬間意識を止める。如何したと言わんばかりの顔でかの人がこちらを見るのだから。



「不都合があるか?」
「いいえ、違うのです」
「やはり私が持つ」
「お重を持っていただいているのにですか?本来なら私が持たなくてはならないのに」
「私が好きで持っている」
「ありがとうございます」
「…」
「この間」
「?」
「左近様が治部様にお礼を申し上げていたら鼻を鳴らされているのをみました」
「?!」
「治部様?」
「い、や…」
「仲がよろしい侍従でございますね。先程も」
「喧しい男だが…」
「お弁当の用意をして頂いたりとても気の付くお方なのですね」
「あ、ああ」
「治部様?」
「何だ?」
「やはりお疲れの様ですね」
「すまない」
「?」
「播磨から来て城下に連れて行くと言ったのになかなか連れて行ってやれん」
「ふふふ」
「何だ?」
「その様にお疲れな顔をされていては心配の方が先に立ちます。」
「…」
「私も侍女の端くれですから。治部様や刑部様がどれだけ忙しいのが存じ上げております。特に最近は…その様な時は休んでいただくのが一番かと」
「だが…」
「ではこう考えませんか?」
「?」
「雨の日に行けないのと同じです。貴方様が健やかならば何時でも。お声をお掛け下さいませ。それまで仕事以外で城下に行きませんから」
「!」
「無理はなさらないで下さい。ね?」
「分かった」
「ふふふ」




ここだと言ってはいる部屋は思いの外黴くさい。曰く、ここに帰ってきたのは数か月ぶりらしい。侍女は?と尋ねてもあーとかうーとか、珍しく歯切れが悪くて首をかしげる。




「辞めさせた」
「?」
「私付きの侍女はいない。刑部にも再々言われているが…そのだ」
「その?」
「明らさまに色目を使ってくる奴もいたからな…好きになれん」
「にしても…治部様」
「?」
「…少しお掃除しても?」
「?」
「いえ、いけないのでしたら…ですけど」
「それはですけど助かるが」
「幸いあまりものがありませんから。少し縁に。火鉢に火をいれますから」
「あ、ああ」
「一刻あればあらかた終わるかと。其処からゆっくりいたしましょうね」














「…」
「あらかた」
「いや、十分だ。」
「布団も干しましたし。今日はゆっくり休めますよ」
「そうか」
「ですが」
「?」
「誰か侍女をつけませんと…恐れ多くも執務室は刑部様と同室ですから私たちがお世話しておりますけども」
「基本あちらで休むから不具合はない」
「…」
「如何した?」
「お気に召していただけるかわかりませんが刑部様にお願いして治部様の侍女を致しましょうか?」
「?!」
「時折になるかと思いますが」
「頼む!」
「治部様?」
「い、いや。刑部にも私から言っておく。…頼む」
「はい」
「…」
「では召し上がりましょう?ふふふ。お茶を淹れますね。」
「ああ」







暗の妹と三成 4









「城下に行かなかったのかい?」
「さようさよう。ひひひ」
「しかも三成くんの部屋かい?」
「あいあい」
「だー!!!!!」
「煩い椅子だね!動かないでおくれよ」
「何がだ!暴れずにいれるか!!!」
「床入りしていた?」
「?!」
「それがなぁ」









(出歯亀だが仕方あるまい…庭先から様子を伺うか)
「…刑部様?」
「!?」
「しぃー」
「ひひひ」









「とまぁ。この様な次第よ」
「あの三成くんを寝させるだなんて!」
「火鉢の暖かさに眠気を誘われたのだろうがなぁ。ひひひ。我が来たことすら気づかぬ深い眠りは珍しい」
「ふふふ。繕い物をして居る彼女の横がそんなに居心地が良かったのかな?官兵衛君」
「何だよ!彼奴はやらねぇよ!」
「知ってるよ。ただし彼方から来たら受け入れるからね」
「ぐ…」
「はよう妹離れいたせ」
「うるせぇ!」

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暗の妹と三成 3

がしゃーーーーーーん!!!!!



「何事ですか?!きゃ!」
「危ない」
「っ?!治部様」
「怪我をする。下がっていろ」
「やれ黒田か。三成よ。助かった助かった」
「ふん」
「何事かと思いましたら…兄上が次は何の粗相を?」
「なーぜじゃー!!!」
「なぁみりゃれ。主は三成が黒田に害なすというが。ひひひ。真逆よなぁ」
「な?!あいつは絶対やる!!!その内絶対だ!!!」
「何を根拠に」
「小生をボコボコにしておいたくせに!!!おかげで洞穴生活だ!」
「それは自業自得よ」
「いててててて!!!」
「刑部様」
「ん?」
「兄上がまた粗相を致しましたようで。申し訳ありません」
「ひひひ。」
「兄上。あまり無体な事をなさいますな」
「小生は何もしてねぇ!」
「っ」






だんと畳を叩いた拍子に鉄の鎖が頬にあたる。優しい兄上だけれども時々あるのだ。こういう不慮の事故が。治部様が引っ張ってくれたから頬くらいで済んだもののいつもなれば医務室行きだっただろう。
お礼を言いたかったものの、如何しても言えなかった。



目の前の兄上や刑部様の顔色や、何より兄上の首筋近くを通って畳に突き刺さっているの刀で今まで皆様が言っていた「それ」がよく分かった






「貴様ぁぁぁ」
「み、三成。落ち着きゃれ」
「ほ、ほら!見てみろ!こうなんだぞ」
「…秀吉様。この愚者の口を塞ぐ許可を…いや、息の根を止める許可を」
「三成。主の腕の中には黒田がおる!落ち着きゃれ」
「っ」
「黒田も!主も」
「治部、様?」
「…」
「かた、なを」
「っ」
「私は大丈夫…っ」
「すまない」
「(あの三成が?!刀をひいた!)」
「脅かせてしまった」
「い、え」
「泣くな…本当にすまない」
「ごめんなさい。私」
「涙を」
「?」
「拭って良いか?」
「!」
「恐ろしいか?」
「…ふふふ」
「?」
「ふふ、」
「なぜ笑う?」
「だって、治部様が」
「私が如何した?」
「いつも通りで…ふふふ」
「泣きながら笑うのか?」
「だって。本当に、びっくりしましたけど」
「?」
「いつも通りの治部様で本当に良かったです」
「そうか」
「!」
「?」
「い、え。あ、の!」
「ん?」
「離して、下さい」
「あ、ああすまない」
「あと」
「?」
「ありがとうございます」
「いや…頬の怪我を」
「怪我の内には入りませんよ。兄上といればこんな程度の傷」
「…ほう」
「治部様?」
「いや、何でもない。刑部」
「やれ任しておけ。」
「行こう」
「はい」





暗の妹と三成 3





「汚い首故洗って待とうなぁ」
「なぜじゃあ!」
「まぁ、良い仕事はしたなぁ。」
「ぐっ!」
「悪言を耳に入れるはずだったのになぁ。」
「…けっ!」
「まぁ。くっつく時は勝手にくっつくものよ。ひひひ。頑張って婚礼の支度を致せなぁ」

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暗の妹と三成 2

「雨」
「致し方ない。天の采配には勝てぬ勝てぬ」
「…」
「そう天を睨むでないわ。ますます雨脚が強くなろう」
「っち!」
「致し方なしとあれも仕事に出てしもうたしなぁ」
「…」
「やれ、三成。…ん?」
「失礼いたします」
「おお、黒田」
「お薬をお持ち致しました…治部様?」
「な、何だ?」
「縁でおられましたら寒くありませんか?」
「いや」
「火鉢でもお持ちいたしましょうか」
「では、頼む」
「あと、少し動かないでくださいね」
「?!」
「御髪に雫が。雨足が強くなっておりますから。」
「やれ、三成。部屋に入りゃれ」
「ああ」
「お茶をお持ち致しますね」
「頼む」
「刑部様」
「ん?」
「私が帰ってくるまで治部様が帰られないようにお願いいたします」
「?」
「ふふふ。今し方お部屋に行きましたけれどもいらっしゃらなくて。」
「早よ行きゃれ。」
「はい」



ぱたぱたという足音を珍しく聞かせているところを見ると走っているらしい。これは本当に珍しいと言えば、三成は真っ青な顔をして「拒絶されたのだろうか」とあさってな台詞を吐き出すので一応笑っておく。
拒絶するなれば入ってこぬよと言えば納得しきらずとも落ち着いたらしく、そうかとだけ言うのだ。
この太閤狂いの朴念仁が一端にも恋をした。我と話すあれが気になって仕方がなくなったのは寝込んだ時に献身的に看護をしていた姿を見てかららしい。我は当て馬よなぁと下がらぬ熱の中言えば鼻で笑う程度の余裕があったのに「色々」あったせいでその余裕も無くなってしまって今に至る。
不器用で致し方ない男だがなぁと内心思いつつもあの初心な黒田では何の発展もないだろうとあれの上司と話した上で発展させようと躍起にはなるものの毒気抜かれるのは我らの方なのだ。
あの二人の内にある感情は恋愛の有無を度外視してもまるで童のような、純粋で無垢な感情なのだから




「遅い」
「やれ落ちつかしゃれ」
「まさか!」
「失礼致します」
「?!」
「すいません。少し手間取って…あら?」
「ひひひ」
「治部様は縁がお好きなのですね」
「…」
「縁側よりにお座布団をひきましたから。」
「ああ」
「手ぬぐいを」
「すまない」
「火鉢も」
「私が」
「いえ大丈夫でございますよ」
「だが」
「お茶とあと」
「?」
「菓子を作りました。折角のお約束を反故にしてしまって…」
「?!」
「お詫びの印です。また宜しければお誘い下さい」
「あ、ああ」
「刑部様の分。」
「やれすまぬなぁ」
「では失礼いたしました」








暗の妹と三成 2







「なー半兵衛」
「何だい、官兵衛君」
「うちの妹の」
「ああ三成君の想い人だね」
「何でお前さんまで知ってんだよ…」
「この大阪のことで知らないことなんてないよ。」
「よりによって三成かよ…」
「文句でもあるのかい?」
「大有りさ!小生の可愛い妹が」
「あきらめ給え。君に似ず彼女は聡明みたいだしね。吉継君が乗り気なんだ。そうやすやすと破断にならないよ」
「…才色兼備で素直な優しい娘が、よりによって」
「しつこいよ」
「だってよ〜」
「ふむ」
「?」
「三成君もそろそろ独り立ちしたほうがいいとは思っていたから…丁度良い」
「半兵衛?!」
「冗談だよ…まぁ人の恋路をなんとやらと言うんだ。秀吉に仇を成そうとした君の妹と分かっても諦めないのだから彼も本気だろう」
「それだ!」
「ん?」
「流石天才!」
「ちょと待ちたまえ」
「おーい!!!!」
「行ってしまった…誰か。吉継君に伝えてくれ給え」

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暗の妹と三成

治部様はひどく癇癪持ちで気が短くすぐ人に刃物を向けると聞いていた。ただ一度たりとも遭遇したことのない私にとっては信じがたい話なのだ。穏やかな方だと思っていたくらいなのだから。眉唾物ですねと言えば兄上に驚嘆を通り越してなんとも言えない顔をする。曰く、極悪非道らしい。
怒鳴り声すら聞いたことないと言っても太閤殿下の左腕。兄上の忠告と恐れ多い方であることには変わりはないのでできるだけ近くに寄らないようにはしている。





「熱っ?!」
「?!」
「も、申し訳ありません!お怪我は?」
「…」
「出会い頭にぶつかってしまった非礼どうぞお許しください。…治部様?」
「…い、や」
「本当に。申し訳ありません。…お召し物など大丈夫ですか?」
「私は…」
「でしたら不幸中の幸いでした。お咎めは謹んでお受けいたします」
「?!」
「ただ、此方を片付ける間はお許しください。」
「咎は」
「?」
「咎はない…寧ろ、私のせいだ」
「?!」
「すまん」
「いえ!私が周りを…本当に」
「撒いたのはお茶か?」
「はい」
「火傷は?」
「大したことはありません。」
「…来い」
「!」
「い、や。すまん!手、など。少し待っていろ。」
「はい」




そう言うと風のように走っていかれる。私は驚いたものの立ちすくむわけにもいかず、片付けをし始める。よかった割れてなかった。近くを歩いていた同僚にお茶をお願いしているとまた、風のように走って来られる




「おい」
「は、はい!」
「片づけをしておけ。」
「それは私が」
「お前はこっちに来い」
「?」
「手当てする。あとが残っては大変だ」
「そんな。お手を煩わせるようなこと」
「…」
「…」
「…」
「…では、お願いいたします」
「刑部の薬だ。よく効く。」
「そんな高価なもの!」
「気にしなくていい」
「ですが」
「手を出せ」
「ですが」
「私から言っておいた。気にするな」
「後からお詫び申し上げないといけませんね」
「…」
「っ」
「少し酷いか。痛いか?」
「少し」
「すまない」
「?」
「あまりこういうことは得意ではないらしい」
「ふふ」
「…」
「治部様はお優しい方ですね」
「?!」
「申し訳ありません」
「?」
「この程度で痛いだなんて…情けない話ですが痛いのは苦手で」
「そうか」
「治部様?」
「華奢な手だ。私たち武人と違うのだから致し方…す、すまん!そう言う意味では」
「???」
「そ、そういえば。刑部の所の侍女だったな」
「はい」
「名は?」
「?」
「刑部に聞いたがお前に聞けと言われた。」
「ああ。申し遅れました。刑部様に仕える侍女頭補佐の黒田と申します」
「くろ、だ?」
「はい。」
「まさ、か」
「?」
「暗の?」
「ふふふ。治部様も兄上のことを暗と呼ばれるのですね」
「?!」
「刑部様は私のことを黒田と呼ばれます。当主の兄が暗ですから、少し居心地が悪くて」
「そう、か」
「治部様?」
「いや、いい」
「?」
「出来た」
「ありがとうございます」
「すまない」
「?」
「やはり、名を教えて欲しい」
「???」
「黒田ではなく…その、だ」
「え?!あ、の」
「…」







「そーは問屋が卸さねぇぜ!」
「?!」
「あら、兄上。如何致しましたか?」
「ほらこっち来い!連れ戻しに来た!!!」
「何を言っているのですか?」
「やい!三成!!!うちの初心な妹手篭めにしようと思ったら大間違いだぜ!!!お前も!そうほいほい下の名前言うなっつっただろう!」
「…」
「兄上。失礼でございますよ。」
「何がだよ!」
「治部様は怪我をした私の手当てを」
「手を触らせたのか?!やい!!!三成!!!このむっつり!!!!」
「兄上!…申し訳ございません。兄上がとんだ非礼を」
「構わん。お前のせいではない(が、覚えておけ!!!!暗!!!!!)」
「(こぇぇぇぇ!けど!可愛い妹に手ェ出す奴は許さん!)ほら!行くぞ!!!!」
「兄上。私にも仕事が」
「仕事ったって刑部の世話だろ!あの捻くれ者の世話なんて!」
「ひひひ」
「来たか」
「げ」
「あ、兄上?!刑部様!」
「やれ、釣れた釣れた」
「刑部!!!!おろせー!!」
「仕置きよ仕置き。やれ、黒田」
「はい」
「主は少し休みしゃれ。三成」
「何だ」
「この娘は暗と違って働き者よ。」
「おい!どういう意味だよ!!!!」
「知っている。それがどうした」
「播磨から来て城下で遊んだことのない堅物。少し遊びに連れて行ってやらしゃれ」
「?!」
「治部様はお忙しいのですよ?刑部様こそお暇無く働かれておいでなのに」
「しかしなぁ…」
「おい!俺を下ろしてから話しやがれ!!!」
「ひひひ」
「なーぜーじゃーー!!!!」
「あ、兄上?!」
「ひひひ飛んだ飛んだ」
「おい」
「え?は、はい」
「明日、朝食が済み次第行く。」
「え?!」
「ここで待っていろ。良いな」









暗の妹と三成









「ひひひ」
「刑部、感謝する」
「いや何。我な構わぬがなぁ。あれの兄は良いか?」
「?」
「わからぬという顔だ」
「あれはあれだ。暗とは違う」
「左様か」
「…」
「(本に嬉しそうよ)」
「おい!」
「はて、この椅子は煩い、煩い」
「いでぇ!」
「あれは美しいのになぁ」
「妹は生まれた時から可愛いんだよ!」
「…」
「な、何だよ」
「貴様知らぬ事実が許し難い」
「?!」
「即刻首を」







「失礼いたします」







「やれ黒田」
「…刑部様。兄様にも少し優しさを」
「いや何。これも優しさよ。躾せぬ犬は何時かは…なぁ」
「恐ろしいわ!」
「お茶をお持ちいたしました」
「すまない」
「お二人とも。治部様を見習って落ち着いてくださいませ」
「ひひひ」
「明日」
「侍女頭様にも許可を頂きました。石田様はよろしいのですか?」
「良いのよ。賢人にも言われておったからなぁ。三成にも休暇は必要よ」
「…」
「私は構わん。」
「なら」
「?」
「実は楽しみで」
「!」
「では明日宜しくお願い致します」
「あ、ああ」
「では失礼いたします」







「まさに早業よの」
「猫かぶりやがって!」
「黙れ」
「ひひひ。では三成に代わって優しい我がしつけしてやろうなぁ」
「なぜじやーーーーーーー!!」

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恋慕した幸村

「いたいた!」
「女子?!」
「あら、三成だけの方が良かったかしら?でもやめたほうがいいわ。すごく怖いのよ!」
「え?三成???」
「私の事だ」
「?!」
「半兵衛様に言付かってきた。貴様の世話係だ」
「私は月よ。こっちが石田三成。無愛想だけど優しい人だから」
「月」
「ふふふ。名前を名乗らないと。ごめんなさいね。随分待ったでしょ?」
「い、いいえ!大丈夫でござる」
「急に頼まれごとがあってね。さて行きましょうか」
「?」
「あなたが今日から寝起きする部屋。」
「え?!」
「?」
「如何したの?」
「そ、某。」
「あ!」
「月?」
「大丈夫!変なとこじゃないのよ。私と三成の部屋の横よ」
「?!」
「言い方が悪い。私とこいつの部屋の間だ。慣れるまでそこにいろ。」
「変な言い方した?まぁいいわ。襖一つだし。寂しかったら開けてみんなで川の字になって寝ましょう」
「川っ?!」
「諦めろ。此奴はこういう奴だ」














「あら!」
「月殿!」
「弁丸?!え?!わー!!大人になって!」
「旦那誰この人?」
「月殿だ」
「こんにちは。えーと…?」
「某の忍びでござる。佐助。此方は俺が元服前に大阪にいたとき世話になった御仁だ」
「俺?!弁丸が俺?!」
「月殿?!」
「月日が経つのは早いはずよねぇ。通りで私がおばちゃんになるはずだわ」
「そんな!月殿は昔と変わらず美しい女性でござる!」
「そう言ってくれるの弁丸だけよ。三成にしても吉継にしても散々からかってくれるわ。あ、2人には会った?」
「はい。月殿に会うように言われました」
「あら、言われなかったら会わないつもり?」
「そんな事は」
「月」
「三成」
「あまり喋るな体に触る」
「はいはい。ったく心配性ね。産後が長引いただけよ」
「風邪も引かんというのにな。飲め」
「ありがとう。弁丸も!ほら。三成。お客様」
「侍女がすぐ来るだろう」
「もー」
「私の茶は秀吉様と半兵衛様、刑部とおまえにしか淹れん」
「あら、まぁ。」
「何だ?…茶も来た。真田」
「はい」
「暫時そこで待っていろ」
「はい」
「ふふふ。面倒くさい男だと思うでしょ?」
「某には昔と変わらぬ石田殿とお見受けいたすが」
「昔っから面倒だったのよ」
「体は?」
「んー?普通にしていたらね。案外、城の人たちは喜んでるかも。じゃじゃ馬が静かになってって」
「その様なこと!…某、父に聞いてよく効く薬草を手に入れ申した」
「わ!ありがとう」
「…」
「如何したの?」
「何もできない某が不甲斐なく」
「それは私も一緒よ。というより全然違うわ!武勇は聞こえてますよ、幸村様」
「さ、様など!止めてくだされ」
「いやだって」
「(旦那挙動不審すぎ)うちの旦那様づけは苦手みたい」
「んー…なら」
「?」
「幸村」
「…!」
「何の話をしている?」
「三成」
「?」
「元服して初めてあったから」
「昔の様に呼び捨てるなよ」
「わかってますって。起きてた?」
「ああ」
「春も来たのね。」
「連れてきた」
「うふふふ。長女と長男です」
「初めまして」
「春。この方が真田幸村様よ」
「!」
「お初にお目にかかり申す。」
「ふにゃ…」
「あらあら泣かない。三成」
「私は抱くのは苦手だ。」
「もう。父親なんだから」
「乳母を呼んでくる」
「父上様」
「お前はここにいろ」
「はい」
「昔の様に笑われますな」
「ふふふ」
「?」
「昔ね、父上様と私でお世話させていただいていたの」
「人質でござったが月殿には色々と連れ出していただき申した」
「母上様」
「ふふふ。だってねぇ。すごく楽しかったのよ。」
「ええ。某とて忘れた事はござらん」
「ふふふ。幸村様」
「月殿、おやめ下さい。先ほどの様に」
「お願いがあります」
「月殿?」
「私はもうこういう体だから三成のそばにずっといてあげられないわ」
「…」
「三成をよろしくお願いします。本当に面倒くさいし頑固だけど。私にはかけがえのない夫だから」
「はい」
「む、無理にとは言わないわ!ああいう奴だし。時々首絞めてやろうかとも思うけど」
「…某、いつか月殿に恩を返したいと思っておりました」
「恩なんて…何か良いことしたかしら?」
「某にとっては。…家があります故必ずとは申し上げられませんが。必ず」
「ありがとう」
「あ、頭をあげて下され。」
「ふふふ。嬉しい」
「っ。」
「幸村様?」
「ならばひとつお願いがあり申す」
「?」
「娘御を某の嫁に頂きたい」
「!」
「春を?…春」
「春は父上と母上に従います」
「い、今では御座らん!時が来れば。…勿論春殿がいやでなければだ」
「(何言い始めてんだよ旦那!あんたが惚れてたのは)」
「そうね。もしこの話がないとしても。あなたが良いわね」








恋慕した幸村










「春」
「はい」
「…其方は嫌ではなかったか?」
「何がですか?」
「その、だ」
「母上に恋をしていたこと?それとも私の中に母を見たことですか」
「う…」
「当初は悩みましたけど。あなた様の悩みましたでしょう?おあいこですわ」
「今は!」
「?」
「今は、違う。俺は春の事が大事だ」
「…愛しているではなくて?」
「無論!その…愛している」
「ふふふ」
「春は?」
「恋しておりましたよ。会った時から」
「?!」
「初恋が叶ったみたい。ふふふ」

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