銀英伝 銀英伝 ある女の一生 終 2015年07月01日 ホテルで良い子に待っていなさいというので素直に待っている。ヤン提督の没後3年の慰霊祭の参加が今回の訪問の大きな理由らしい。パーティーにも参加していたものの政治色が強くなりそうになるとナイトハルトさんがそう言う。今までは我慢したけどもういい加減我慢の限界だという事。私が奇異の目で見られるのが我慢できないらしい。軍服のせいではない。女性士官が多い分そう言う目は帝国より薄い。私の前夫、オーベンシュタインの名が大きいのだろう。逆にミッツ閣下に気を使わせてしまった。そこが申し訳ない。にしても。御主人様を待つ心地なのは変わらないなぁ。但し、あの人はわたしを前線にまで連れてはこなかったけど。そう思いながら、先程お会いしたヤン夫人を思い出す。あの時はフレデリカさんと呼んでいた。ヤン提督と彼女の姿は好きだったな。『帝国で一番人気のある画家に、私のようなものがお願いするのは些か宜しくないのかもしれませんが、私と彼女の絵を描いては貰えないだろうか?結婚式は疎か写真もまともに撮った事がないので』間に合わなかった絵を今更渡して如何するのだろうと思いながら渡した絵を見て、ミッツ閣下も是非にと言ってもらった。家庭でのヤン提督そのものだと。彼らしか知らない、彼。ヤン夫人も喜んでいただけたのだろう。そう、思いたい。彼の彼女に対する思いそのものだろうから。それが私の自己満足でない事を祈って仕方がない。「ん?」「起きてしまいましたか?」「あなた」「その響き良いですね。」「あなた」「ただいま」いつの間にか寝てしまった意識を起き上がらせたのは彼の声だ。名前を呼んで伸ばした手を優しく取ってくれる。抱きしめてといえば情熱的ですねと笑いながら抱きしめてくれる。「嫌でした?」「うんん」「よく泣きませんでしたね。」「うん」「マインシャッツ」「ナイトハルトさん」「くちさがないものの言うことなど気にしないで」「違うの」「?」違うのと言いながらきゅーと抱きしめる。珍しいこともあるものですねと笑いながら抱きしめ返してくれる。「絶対死なないで」「如何しました?」「思い出しただけ。」「ああ」「もうあんなの嫌。」「マインシャッツ」「貴方も私を一人にするの?」そう言うと頬にキスをくれる。涙を指で拭って抱きしめ直してくれる。「力が弱いですね。」「?」「華奢で柔らかくて。可愛くて愛しい。泣いた顔も笑った顔も。怒った顔ですら。」「ナイトハルトさん?」「朝起きた時に貴女の寝顔があるとどんなに幸せか。キスをするとどんなに愛しいか。夜を共にするたびにそれが深く強くなる。それを」「?」「それを手放したオーベンシュタイン閣下がどれ程無念だったか」「ナイトハルトさん」「きっとこの気持ちは貴女でもわからない。」「そう、かもしれません。」名前を呼ばれて、頬を擦り寄せる。よしよしと撫でてくれるこの手が愛しい。「約束はできませんが」「知ってる。」「マインシャッツ」「知ってて結婚したもの」「…」「無理を言ってごめんなさい」「私も」「?」「軍人としていけないのですが」「え?」「死にたくない」「!」「貴女を置いて死にたくはない」そう言うとぎゅうぎゅう抱きしめてくれる。「ありがとう」「いいえ」「それだけで救われた。」「マインシャッツ」「今日はこのままて寝て良い?」「…」「ダメよ」「わかってます。」「明日は朝からオフですもの。貴女の好きにして良いわ」「…ならどこかに?」「それで良いの?」「一日中貴女のベッドでいたい」喜んでと言って頬にキスをするのだったさよならとまたいつか PR