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変換なしの雑食夢

ran

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銀英伝

「ラーベナルト夫人!」
「顔色がまだ優れませんね。申し訳ありません、我が主人がご迷惑をおかけいたしました。」
「えーと」
「我が家の執事の奥方です。ラーベナルト夫人、私帰りたい!」
「何を言っているのですか?皇妃殿下のご命令で御座います。旦那様が生きていたら…」
「パウルさんが生きていたらこんな事にはならないから」
「ええ。旦那様は奥様の操縦方法をよくご存知遊ばれておいででしたから。ですから、居なくなって1年でこうなるとは」
「…1年頑張ったもの」
「どうせ1年は意地で政務を続けるだろうが、だんだん無理が祟って倒れるだろう。旦那様の申した通りです」
「ぐ…」
「嫁いだ時もそうでしたでしょう!学習なさいませ。」

すごい勢いで怒られる夫人を見ながら途方にくれると、「これを」と差し出される。これが噂のオーベルシュタイン家の執事かと思いながら封筒を手に取る。


「止めなくても?」
「あれはあれでよろしいようです。」
「そう、ですか」
「私共は昔、一人娘を亡くしました。妻は奥様が嫁がれた時とても喜んで旦那様も好きにさせて下さいました」
「…」
「従者には優しい方でしたので。」


その様ですねと裏返すと見慣れた刻印。オーベルシュタイン家のものに間違いはないだろう。不意に従者の顔を見ると旦那様の最後の手紙ですと言う。白い紙にインクで書かれた其れは彼を表す如く神経質な字で書かれている。
預言者の様に夫人の状況を当て、形式的な礼文が並ぶ。
彼女の事を良く知る者にしか書けない内容。思いの外さみしがり屋で人見知り。 情にもろくよく泣き、それ以上によく笑い良くしゃべる。体格の良い軍人が嫌いなのでは無く恐ろしい事。無理をして倒れてしまう為、目が離せないという事。

唯一にして最愛の女であり其れとともにあれたことの喜びと置いていかなければならない事の不安と憎しみ。きっと前に進んでいるようで立ち止まっているだろう心配。

如何に彼女を愛しているかが分かる文章に驚いてしまう。私が知っている彼は天変地異が起きたとしても言う人ではなかった。
彼女の取扱説明書といっても過言ではない其れをめくると彼女の出自や軍人嫌いの理由を表面的に書いてある。


『この事を知って、其れでも卿があれで良いと言うのなら彼女を愛してやってほしい。オーベルシュタインの者にはよく言ってあるし、彼女にも言い含めてある。ただ、頑固で臍を曲げたら中々治らん性格故、無理やりは進めぬが卿ならせぬと思っている。
私が言う事ではないが彼女を泣かす事、苦しめぬと誓うのであれば私は何も心配せずにヴァルハラとやらに居られる事だろう。
どうか彼女を頼む』

日付は彼が死んだ前日。どの様な気持ちで書いたのだろう。
赤い薔薇とあの彼女の絵を抱いて眠る彼はどの様な気持ちなのか。

「断るのなら受け取り捨てよと仰せつかっております。」
「いいえ。これは大切にさせていただきます。」

従者は少しだけ嬉しそうな顔をして一礼すると奥様をお願いいたしますと小さな声で言うだ。


「命に代えても」

このセリフの意味を重さを知るのはきっと自分と彼だけなのかもしれない。



ミュラー提督の決意

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