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変換なしの雑食夢

ran

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萩と鹿 1

この大坂城の一角には萩が咲いている箇所がある。
白いものの奥に紅紫のものが咲いているそうだ。此れが憶測の域を脱せれないのはその場所が私の与えられた部屋から一番遠いところである事と其処の武将は口数の少ない好んで他者と交わる者ではなかったからだろう。
私ですらまともに話したことは無い。半兵衛様曰く終始あの様な状態だという事。私は私より無愛想な男を生まれて初めて見た。唯、それは不愉快でもないのは誰もが一目置く程の太刀の使い手である事と私と比べられても遜色無い忠誠を秀吉様に捧げている事の為だろう。故に皆それを受容していた。私とてそうだ。左翼に抱き割り萩が見えたらば彼方は私の手を煩わせる事は無いと思う程だ。背の小さい優男の旗印にその様な信頼感があるのだから不思議でならない


そんな男の部屋の前に私は立っている。半兵衛様に手紙を渡して来るついでにその萩の花をもらってきて欲しいとおしゃった為だ。




「おい、開けるぞ」




そう言って障子を開けると眼前に紅紫の洪水を見る。刮目するのがわかる。滝の様だと思うほどに咲き誇る萩を私は見た事がなかった。


どれくらいそうしていたのだろうか?にゃーという猫の鳴き声で我に返って猫の声のするあたりに視線をやると薄い紅紫の塊が目に入る。人、なのだろう。だが、降り積もった花びらのせいで其れが真実人なのかの判断も付きにくい。




「ん…」
「?!」
「…餌?」
「にゃー」
「少し、待って?」
「にゃにゃ」
「ふふふ。擽ったい」
「女?」
「え?」
「すまん!此処は雨竜の部屋だと聞いてきた」
「石田様?」






ゆっくりと猫を抱きながら起き上がったのは紛れもなく女で、私は柄にもなく焦ってしまったのだ。


其れは、後ろめたさでも何でも無い。唯、美しかったせいだろう。




薄い紅紫の衣装は花のせいで、淡い色の着物を着た女とこの萩の花はこの世のものとは思えない程美しく、神聖だった。






「お前は牟堂の処へお行き。牟堂」
「にゃ」
「?」
「すまないが、この子に餌を。」
「はい。…石田様?!」
「きっと竹中様の御用でお越しくださったのだろう?拙室で御座いますればお座りくださいませ」
「な?…は???」
「?」
「何…を」
「ああ。宜しければ縁に。見頃で御座いますれば」
「何を言っている?!」
「は?」
「お、まえは雨竜の奥か?」
「何、を」
「わ、私は!雨竜にこの書状を!」
「竹中様からの書状で御座いますね」
「だから!雨竜を出せ!!!」
「は?」
「奥方に手紙を渡すわけにはいかん!」
「あ、の」
「約束もせずに来てしまったからな!帰ってきたら」
「私が、雨竜です」
「連絡を!」
「石田様」
「奥方」
「私が雨竜家当主で御座いますれば、その手紙読んで差し支えないかと存じ上げます」
「は?」
「よろしいですか?」
「いや、だが」
「…」
「すまん」
「いえ」
「…」
「仔細あい承りました。萩の花は如何程用立てればよろしいでしょうか?」
「わからん」
「左様で御座いますか。では先年通り致しますので不足がありましたらいつでもとお伝え下さい」
「その前にだ!」
「はい?」
「女だったのか?!」
「え?」
「隠していたのか?!ならば」
「…っ」
「な?!」
「…っ、…くっ」
「如何した?!やはり私に知られては」
「い、え。大事ありません。」
「なら、いいのだが」
「ご心配おかけして申し訳御座いません」
「無理をするな!」
「はい」
「其れと」
「?」
「縁で寝るな」
「???」
「風邪を引いてはならない」
「?!」
「如何した?」
「い、え」
「雨竜?」
「ありがとうございます。」
「きや、その、だ。」
「?」
「気にするな。其れより、花を」
「はい」






萩と鹿







「はははははは」
「半兵衛様」
「や、れ!笑い、しゃるな」
「刑部!貴様ぁぁ!!!」
「いや、だって!雨竜君の事女だと思ってなかっただなんて!」
「し、しかし!半兵衛様」
「まぁ賢人よ。此れが三成の良いところ、よ」
「そうかもしれないね。あの子も人見知りが凄いから。今まで僕と秀吉、吉継君だけにならないと声を出して話さなかったしね。」
「何故だ、刑部」
「ん?あれは我の従兄弟故。ぬしには言うたぞ」
「…待て、女だと聞いていない!」
「性別など気にするぬしでもあるまいに」
「だ、が!」
「何、懸想したのでもあるまいに」
「な?!何を!!!」
「「…」」
「懸想、など!」
「吉継君」
「元々気立ての良い女よ」
「ふーん」
「は、半兵衛様?!」
「いや、ね」
「お、お待ちください!半兵衛様!!!半兵衛様ぁぁぁぁ!!!!」

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