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変換なしの雑食夢

ran

片思い男とクラッシャー女 8

「葵」
「悠?」
「はぁ」
「静かね」
「今帰ったところ」
「そう」
「今さらだけどお前って本当に何考えてんのか解らないよな!楽しそうなのばあちゃんだけだよ」
「なぜ怒るのよ?」
「うちの嫁さん、仙石選手のファン。」
「あー…」
「親戚って喜んでたのに」
「もう一花咲かせて…花ちゃんなら大丈夫。私が保証する」
「俺は?!」
「知らない。」
「そういうところのお前らしい」
「煩い」
「別れるの?」
「うん」
「向こうは納得してないけど」
「知らない」
「自棄になるなよ」
「なってないよ。…要くんは世界を飛び回る姿が良く似合うもの。それこそ千鶴みたいな美人と結婚して可愛い子供作って。幸せな生活してほしいものね。車椅子に座る私の横にはおさまらないでしょ?」
「何それ。くだらないこと言うなよ」
「悠も知らないからさ、別れるなとか言えるんだよ。…知らないから無責任にくだらないとか言えるんだよ!」
「…葵?」
「…ごめん。今日中に家に帰るから」
「は?まだ無理に決まってるだろ?落ち着けって」
「落ち着いてるよ。荷物の整理もしたし…かるさんによろしく言っておいて」
「葵!」
「…」
「長い付き合いだからはっきり言うけどな。お前のそういうところ。可愛くねぇな!」
「そう」
「もう少しここにいろ!いいな」






知らないよという前に扉を閉められるから私はため息をついてベッドから降りる。術後だからしっかり包帯巻いてくれてるし、杖ありゃいけるな。








「あいつ!!!」
「家に帰ったのかい?」
「ばあちゃん!」
「まったく仕方のない男だね!お前は」
「俺のせい?!!」
「当たり前だ。ったく。」
「…連れ戻しに行ってくる」
「あんたにゃ無理だね」
「?」
「あの子の母親と父親は無理心中したんだよ。」
「は?」
「母親の介護苦さ」
「なんだよそれ。」
「あんたたちは小さかったからね。事故死ってことにしておいたけどさ…本当に因果なことだよ」









片思い男とクラッシャー女








痛いと喚いたところで何も変わらない。みんなに見捨てられて一人で生きれたらいいんだけど。携帯見れば鬼電されてるし。さてどうだものか




「丁度いいか」





鞄を持ってタクシーを呼ぶ。そのうち帰るからという置手紙の意味はどれ程のものだろうか。
何がしたいのかなんて私にもわからない。ただ父に殺してくれと言った母とそれを実行して死んだ父。残されて母と同じ病が見つかった私。



因果なものよねと笑って框に座る。





「さて、どこに行こうかしら」


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