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変換なしの雑食夢

ran

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「老い先短い我のためにも無理か?」
「う、ですが…この様な高価なもの。日に焼けた私には」
「地が白い故安心しりゃれ。」
「大体どこから」
「衝動買いよ」
「大谷様」
「残す相手もおらぬでな。誠困ったこまった」
「…一度だけですよ」
「!」
「そのあとは着ませんから」
「それは良かった。よかった。やれこれが良い。着りゃれ。今日は城下に参ろうな」
「私、仕事」
「機嫌の悪い三成の相手は骨が折れる。甘味でも買って紛らわそうぞ」
「う。はい」





目の前の着物を見てため息をつく。若い娘の好む色ではないのがせめてもの情けなのだろう。体を洗って着替えると思わずため息を付いてしまった。石田様は先日から政務で佐和山というところに行っているらしい。三成様の居城があると半兵衛様から教えていただいた。此処からそう遠くないそこはどの様なところだろう。多分私の心を知っているのは大谷様のお優しさと悪戯心だろう。




「大谷様」
「ん?ああ。用意が済んだか?」
「はい。」
「似合っておる。では行こう」
「お荷物お持ちいたします」
「構わぬ構わぬ」
「ですが…」
「今日は我と逢いびきよ」
「は?」
「というより太閤に頼まれた」
「伯父上にですか?」
「急な来客で客間に通す折、主の姿では逆に浮くのでな。目立たぬ様にしてくれと」
「…なぜか体良く良い着物を着ろと言われている様な」
「本来喜ぶとこよの」
「大谷様にご迷惑をお掛けしてまで」
「なぁに。好かぬならせんよ。我とて好き嫌いはしっかりしておる。」
「…」
「但し、覚悟しりゃれ」
「は、はぁ」





そう言って城下を歩く。初めての城下は嫌なほど静かでよそよそしい。ばたりと閉まる音口さがない言葉。こんなに冷たい場所なのだろうかと思っていれば表情がないよのと言われる。




「ええ、ですが」
「気にしりゃるないつもの事よ」
「いつもの?」
「これも我の不幸…ん?」
「…」
「やれ可愛い顔が勿体無い。その様に脹れるものではない」
「もう帰りましょう。こんな情のない場所で買い物なんて」
「ひひひ。此処が特にひどいだけよ。にしても」
「?」
「ぬしは怒られるか?また、何故」
「私は私の大切にしなければならない人にひどい仕打ちをされて笑うほどひどい人間ではないと思っていますが?」
「ぬ?」
「三成様、大谷様。お婆様が居なくなって途方にくれる私に誰よりも優しくしてくださった方です。」
「我はしておらぬよ。すべて三成のおかげよ」
「三成様から聞き及んでいます。わたしを看病するため、三成様が動ける様に差配をしてくれたり、時折置いてくださる甘味も。三成様とは違う形としても貴方様からのご恩は感謝しても無下にするものではないと思っているのです…ああ、大谷様」
「ん?怎?」
「石を投げてやっても良いでしょうか。もう!腹立つ!!!」
「意外と御転婆よな。この辺り昔、辻斬りが多発してなぁ。我が治癒の妙薬を作るために殺しておると言われたのよ。」
「辻斬りをですか?…大谷様なれば刀でなくそのふわふわした球体で捻り潰しましょう。熊の肝ではないのですから…」
「いや、強ちなぁ」
「ご入用なら私を召し上がってくださいませ」
「…これ、外聞の悪い」
「私一人なら変な噂も流れませんし。大体戦さ場に立たれる方が屍に困るとは思えません。少し考えればわかるものでしょうに」
「意外と毒舌よな」
「いえ、申し訳ありません。無償腹が立って!」
「ひひひ。我は故にぬしを虐げられず愛でたいのかもしれぬなぁ」
「?」
「ぬしは三成に必要な子と言われたらしいが我もそうよ。」
「お、大谷様がですか?」
「ん?不思議であるまい。この病を得たものの定めよ。そこ折三成に隠居を申し出たら許可が貰えなかった。見捨てる気かとなぁ。見捨てるも何も厭うとこよなと言い含めたものの理解が得られず。まぁそれはそういうものかと諦めた。が、我の中に一つの概観が生まれた。この者の禍は我が払い咎は我受けると。」
「そうでしたか」
「ひひひ。ぬしにもある」
「?」
「我と同じよなと。不必要と言われるのは思いの外答える。初めて会った折の悲しい目は我は忘れられぬ。もうその様な目をせぬで良い様に差配をしよう。」
「恐れ多いことです!そんな、私の様なものに」
「我を厭わず。剰え必要とするものへの手向けよ。さてついた」
「…」
「この歳になって癖の強い弟と愛らしい妹ができたのはありがたい話よな」
「此処は?」
「この世で二番目に我を大切とした女子がいる。…馬鹿故うつらぬようにな」
「刑部さん!人の店先で私を蔑まないでください。」
「わっ」
「ひひひ。久しいなあ。息災か?」
「もう!元気なのは良いですが難読問題のような文止めてって!あ、初めまして。これの妻の砂羽衣です。」
「ご、ご結婚さていたのですか?!」
「これの戯言よ。砂羽衣。」
「あだー!それでこつかないで!」
「馬鹿故平気よ。」
「もう!さあさ。お入りください。頼まれたのは用意してます」
「ん。」






そう言って入ると夥しい着物と小物。小間物まで。ひひひと笑う大谷様は出どこのほとんどは賢人と太閤よと言って笑う。それはそれで恐ろしい。何より、貰わぬと大変な事よなという台詞と本当に女気のない城ねと嘆く砂羽衣様の無言の受け取れが何よりも恐ろしい。
来客時にあの格好は駄目というのにも一理あるからますますもって困っているとお店の番頭さんが来客を告げる。




「刑部!この馬鹿女の店に何故呼んだ!」
「もう!治部様。馬鹿とはなんですか!今まで服支度をして差し上げたご恩をお忘れかしら」
「何を惚けたことを言う。貴様の雑で縫い目の乱れた着物に価値があるか。ちいの作ったものを見てみろ。これほど見事に作っても何も言わぬ謙虚さを見習え!」
「あら、まぁ。お熱いことで。さすが懸想相手にはお優しい」
「やれ、砂羽衣」
「当たり前のことをいう…来客が居たのか?」
「困ったこまった」
「?」
「その恩もない私が見立てたのですよ!さぁいかがです!」
「…ち、い?」
「あ、の。三成様。お帰りなさいませ」
「…」
「落ち着きゃれ。」
「この馬鹿女。頭を垂れろ!その首切り落として!」
「きゃー!怖い怖い。ちい様助けて」
「わっ!」
「貴様!ちいから離れろ!」
「離れたら死んでしまうから嫌ですわ」
「刑部!」
「やれどちらもどちらよ。ちい殿が困っている。」
「っ」
「誠愛い話よな。」
「…」
「あ、の?」
「い、いや。なんでもない」
「お、お刀を収めくださいませ」
「ああ。」
「助かったー。」
「ぬしも悪戯が過ぎる。ちと、灸をすえるか。三成」
「何だ!」
「我は今宵此処で泊まる故。ちい殿と先に帰られよ。」
「わかった」
「ちい殿。衣装は後で送るゆえ。ああ。甘味どころはつれていってもらわしゃれ」
「はぁ」
「参ろう」
「はい」






「初々しい!」
「悪戯が過ぎる」
「だって」
「まぁいい」
「んっふー。吉継さん」
「はぁ。ぬしももの好きよなあ」














「…」
「…」
「ちい」
「はい」
「変わりなかったか?」
「今の今までは。」
「そうか。その衣装は」
「伯父上からの命です。凄く恥ずかしくて」
「そうか?似合っている」
「っ」
「ちい?」
「あの、ありがとうございます」
「いや、それと」
「?」
「馬鹿女とえの話だ。」
「砂羽衣様?」
「本当の事だ」
「!」
「私はお前に懸想しているが、無理な見返りは求めていないし欲しくない。」
「は、い」
「だからきにし…ちい?」
「少しだけ、ていいですから。袖をもたせて下さい」
「そんなに少しでいいのか?」
「今の私にはいっぱいいっぱいです」
「くくく。初だな。まぁいい。離すな」
「はい」

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