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変換なしの雑食夢

ran

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丁子色

「帰ってきたの?如何だった?三成君に嫌がられたかい?」
「一層清々しいですね。誰のせいと」
「乱闘は?」
「ありませんでしたよ。何事も恙無く。治部から話を聞いておりますか?」
「ああ。」
「ならその通りだと思います」
「いや、ね」
「?」
「君の口から聞きたくて」
「真田様は噂通りの方で同盟なればと即締結して来ました。内容は我らよりでしたので。傘下にと申すより勇猛果敢な騎馬隊を有する武田は自由に戦っていただければ。何事もなければ誓約を破る御仁には思えませんので、今は様子見でよろしいかと。城内はうちと違い賑やかでしたが士気も高く良い兵でした。矢張り、あそこを落とすのは時と資金がかかり、見合うものとは思えません。」
「そうか」
「平野の城ですから攻めやすそうですが手薄になった大阪には背後に毛利が有りますので其方の仕舞が付くまでは関東遠征は難しいかもしれませんね。ああ、そうでした。治部と真田様が妙に馬があっておりましたよ。ふふふ。共に実直で素直な方でしたので。佐助様には婚儀縁について聞かれましたが人質は不要と申しております。」
「そう」
「これ以上私の配下は要りませんよ。兄様も半兵衛も女に興味はありませんでしょ?皆が献上して来る女なんと多いことか。帰る当てのないものたちは私の荘園で働いていたり、当てのあるものは突き返したりとして何とかしているのですよ。もういいです」
「此方が送るって手もあるけどね」
「姫は私しかおりませんので。行けばいいですか?」
「冗談だよ。三成君は如何だった?」
「いつも通りでした。逆に私が緊張してしまって」
「捻挫を酷くしたと」
「痛いです」
「まぁ当分交渉してもらうとこないし。少し休みなよ」
「ありがたいお言葉です事」
「剣があるなぁ」
「日頃の行いですよ」
「まぁいいや。ではね」
「半兵衛」
「ん?」
「…無理してはいけませんよ」
「うん。わかっているさ」










半兵衛が居なくなったのを見届けて私は足に巻かれた包帯を退ける。腫れが酷くなってしまった。濡らした手ぬぐいを置くだけで激痛が走る程度に。骨に異常はないのだろうかと思いつつもどちらにしたって固定して冷やすしかないのだから同じ事だろう。
庭を見ると沈丁花が咲いてある。良い香りがするなあと思っていたら居ても立っても居られなくなるので花を打ってきてもらう。5枝。兄様と半兵衛。私と刑部と、治部と。嫌がられるかもしれないなと思いつつ文を認める。信濃への礼を書けば良いだろうか?彼方から帰ってこない一方通行の文は不毛と思いつつもせずにはいられない。彼に嫌われていると知ってもなおこんな事をしてしまうのは偏に彼に恋しているからだろう。半兵衛と刑部しか知らない話。よく気にかけてくれる刑部と揶揄う半兵衛。




「姫様」
「使いをお願い。部屋のものに言って生けて差し上げて」
「はい」
「お願いしますね」





きっとまた返事など帰ってこないだろうなと思いながら私は沈丁花を抱いて横になるのだ。







丁子色








「姫様から石田様と大谷様に文とお花を」
「姫様からか?」
「はい」
「そこに置いておけ」
「ですが…」
「今手が離せん」
「はい」
「われも同じよ」
「あいわかりました」
「…行ったか。やれ三成」
「如何した?」
「姫の足は?」
「悪化された。歩かれたのだ仕方あるまいが…」
「骨に異常はないのか?」
「ああ」
「それはいい。我のようになっては大変よ。たいへん」
「…」
「三成?」
「私が行ったからだ。」
「?」
「姫様に無理をさせてしまった。騎乗ですらお手を触れるのを嫌がられたのだ。同乗すれば少しは」
「嫌がったのではあるまい。戸惑ったのよ」
「何故だ?!」
「主と同じ事よの。ヒヒッ。にしても良い香りよの」
「あ、ああ」
「ん?」
「礼を書かれてられる。あの方の為に私は何も出来なかったのに」
「…」
「何か、御心を慰めれるものはないか?いや、然し」
「文を書けば良かろう?返信を」
「憚られる」
「…左様か」

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