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変換なしの雑食夢

ran

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雲海

「明日の訓練は私が担当らしい」
「ん?…ああ」
「北条攻めも近しいし。少し気を引き締めるわ」
「どんな輩を馘こうが私のやることには変わりがない」
「?」
「秀吉様の命に従うのみだ」
「殿下の御為。石田殿らしい」
「黙れ」
「ん…」
「おい」
「何?」
「…少しは此方に集中しろ」
「…っ」




そう言って穿つとふるりと睫毛が揺れる。耐えているわけでもなく、嫌がるわけでもなく。声ひとつあげないこいつの唯一の反応はいつもこれだ。




「…」
「?」
「部屋に帰る」
「え?あ。そう。でも」
「でも何だ?」
「…いえ。貴方の事だから理由があるのでしょう?」
「…貴様には関係ない」
「…」
「おい」
「ん?」
「寝ていろ」
「え?」
「良いな」
「…忙しかったの?」
「い、や…そうでは無い」
「…そう」
「おい」
「でも石田殿も明日早いから…早く寝て」
「…余計なお世話だ」
「ごめんなさい」
「?」
「あとありがとう」
「おい」
「ん?」
「いや…」
「おやすみなさい」
「あ、ああ」


時折だ。あれを抱くことが至極虚しくものの様に思う。今、眼前にて組み惹かれている女の様に嬌声を上げなくてもいい。昵事も望んではいない。…ただあの目で私を見てほしい。そう、願ったものの一度たりとてその瞳は私を写すことがない。一方的な関係なのだから致し方無いのかもしれないが…。

あれは、私たちの関係は至極刹那的で無意味な関係だと思っているのだろう。
私が、いくら求めてもあれと二世を誓う中にはなれないのだと言われている様だ。
そう刑部に告げると少し驚いた様な顔をして此方を向いた。



「抑。」
「何だ刑部」
「あの水鳥となぜそういう関係に至ったのか…ひひひ。我とて知らぬ故な」
「水鳥と言うな」
「はてさて。以前名を呼んだ徳川を主はしたたかに打ち据えていたが。我はいいのか?」
「…」
「都合が悪くなると黙る癖を治しりゃれ」
「戦帰りにそのままだ」
「ひっ?」
「なんだ」
「恋仲ではないと?」
「…そうなりたいとは願っている。が、不可能だろう。あれは私を歯牙にも掛けない」
「左様、か」
「今はその話をすべき時ではないな。すまない、仕事をする。書類は」
「あいあい」
「…」
「やれ三成」
「…何だ?」
「主はいかが願う」
「それは」
「不可能を望むのなど主らしくも無い。くだらんと一蹴せず、求めるほどのものか?」
「…」
「愛しき女がおらぬ我にはとんとわからぬがな」




雲海




「水鳥様!」
「…左近殿。私は小鳥であって水鳥では無いのですが」
「でも、さ!この紋」
「…紋で呼ばれても…」
「可愛いじゃ無いっすか!」
「もう何でも良いです。で、なにか様ですか?」
「三成様から書状です」
「私にですか?わざわざすいません」
「いえ!仕事っす!」
「…お返事が必要な書類ですか?」
「はい」
「では拝見いたします」
「…」
「…」
「…」
「…」
「水鳥様」
「?」
「ここ」
「首?」
「…鬱血跡」
「?!」
「三成様と仲が良さそうで何よりっす」
「…そうですか」
「あれ?喧嘩中っすか?」
「さあ」
「水鳥様ぁ」
「?」
「なんかあったんっすか?」
「いつも通りですよ」
「の割には」
「?」
「三成様の元気が無いんっすよ。喧嘩したのかと思って様子見しに来たら首の跡があるし。よかったって思ってたのに水鳥様なんだか淋しそうだし」
「そうですか?気のせいですよ。…返事書きます」
「待ってます。あれ?」
「何ですか?」
「此れって」
「…じっとしていなさい。」
「水鳥様。大阪からいなくなっちゃうんですか?!」
「あなたという人は…良いですか。」
「三成様ぁぁぁぁぁ!」
「え?!あ!ちょっと。行ってしまった。違うのに」

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