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変換なしの雑食夢

ran

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真を芯に清して進す

「おい。どういうことだ」
「何がだ」
「なぜ私の横で食べる?!」
「…私に言うな」
「っち」
「舌打ちする様な男など嫌われるぞ」
「何の話だ」
「だだ漏れだ。月瀬殿の事だ」
「あいつの眼には私など映っていない」
「そうか?」
「私と同じだ。立場は違うが…秀吉様のためだけに生きている」
「成る程、な」
「何だ?」
「貴様が好むはずだ」
「…秀吉様に忠誠を誓うから好ましいのではない。あれはあれだから好ましい」
「熱いことだ」
「そんな事より!」
「面白そうだしな。契約は続ける。姫もこちらについたのだろう?」
「あの姦しい女か」
「言うてやるな。世間一般ではあれが女だ。私も可愛らしいと思うがな」
「ふんっ!」
「くくくっ。本当にわかりにくい男だな」
「煩い」
「月瀬殿の言葉だ」
「…」
「世話になっていると言っていたがな」
「こちらの台詞だ。あれは自分を過小評価しすぎだ」
「みたいだな。奥ゆかしいと言えばいいのか?」
「秀吉様にとって無くてはならん存在だと誇っていれば良い」
「惚れ気を聞かされるとはな」
「事実を述べたまでだ。」
「ひひひ。盛大に勘違いしておるがな」
「大谷」
「どういう意味だ、刑部」
「ぬしのも想い女は自分では無く、雑賀を想うておると解釈した様よ」
「…」
「石田もこんな顔が出来るのだな」
「…何故、そうなった?!」
「知らん」
「意外に私心は抜けているからなぁ」
「…何故、私が!」
「おい待て。それはこちらの台詞だ」
「あれは何処だ!刑部!!!」
「あれは、ほら。あちらよあちら」
「!」
「…そっくりだな」
「太閤の前ではいつもああよ。そっくり。そっくり」
「…片思いだな」
「別段、あれとどうこうなりたいと思っているわけではない。ただ、あれ以外に番おうとは思わんだけだ」
「それを片思いというのよ」
「っち!」
「ふふふ。お前も人間だということか」
「黙れ!」
「石田様?」
「?!」
「月瀬殿…何か用か?」
「石田様、怒らない怒らない」
「…」
「怒って食事を食べてもよくありませんよ」
「何度も聞いた」
「美味しくありませんでしたか?」
「…美味い」
「あら、嬉しい」
「?」
「ひひひ。太閤、賢人、三成と我の分はこれが作るのよ」
「一度古いものを太閤殿下のお膳に上げようとしたものがおりましたから…それ以来私が」
「これのなら三成も食すでなぁ」
「しっかり食べて太閤殿下の為お尽くししましょうね」
「…ああ」
「仲が良いな」
「そうだ!おい。」
「私でございますか?何か用か不手際でも?」
「私の心に決めた女はこれでは無い」
「え?」
「私は仕事仲間だ」
「違うのですか?」
「ひひひっ。ぬしの勘違いよ」
「…とてもお似合いですのに」
「私に言わないでくれ。選ぶ権利はあると思う」
「漸く石田様のお子が見れるかと思いましたのに」
「?!」
「やれ、話が飛びすぎよ」
「大谷様でもよろしいのですよ?殿下のお子も竹中様のお子も。それはそれは可愛らしいでしょうに。」
「我を好む女がいりゃるか。ひひひっ、無理よ無理」
「…ふふふ。いたらよろしいのですか?」
「やれさて、怖い怖い。ぬしは言質を取りしゃるからなぁ」
「月瀬殿」
「雑賀様?…御心を変えて下さいましたか?!」
「違う…が、そうだな」
「?」
「貴方が子を産んでやれば如何か?」
「私がですか?」
「ひひひ。なれば我より三成よ。頃合いも良い」
「御冗談が過ぎますわ。石田様には強く美しい奥方様が」
「貴方ではいけないのか?」
「ええ。私ではダメです」
「何故?」
「今ここで私が裏を抜けましたら皆様方に迷惑がかかります。嫁ぐとなるとこの大阪を出ねばなりません」
「まぁなぁ」
「佐和山のお城も大切な石田様の城でございますから。そこを支えられる奥方様でなくては」
「石田が嫌ではないのだな」
「嫌といいますか…殿下の左腕たる方をその様に見たことが無いですから…石田様?」
「私は…」
「ふふふ。何より私は殿方が恐ろしゅうてならないのです。ご存知でございましょう?」
「っ?!」
「何の話だ?」
「はてさて…我には…とんと」
「私も、恐ろしいのか?」
「普通にしている分には全然。私達は殿下に仕える同胞ではありませんか」
「…」



そう言って月瀬殿は困った様に首を竦めて、大それた事を言って申し訳ありませんという。きっと途方に暮れた石田の顔を見て再び勘違いをしたのだろう。同胞というのが烏滸がましいと。
この一週間、大阪に滞在して彼女の並外れた忠誠心と能力の高さに驚いた。成る程毒舌な大谷まで彼女を褒めるはずだと。その上そういう所を偉そぶらず、誰にでも親切で丁寧だ。良い娘なのだと思う反面それはきっと自信の無さから来るものだということにも気がつく。兵を殊の外丁寧に扱うのもそのせいだろう。





「月瀬殿」
「はい」
「石田の奥は美しいだけではなく強くなければならないのか?」
「やれ、雑賀」
「どういう意味だ?」
「いやなに。気になってな。此処までの能力があるのにも関わらず己を誇示しない」
「昔からそうだ。これの美徳だ」
「謙遜なら美徳だが些か度がすぎる」
「何?!」
「石田様…落ち着いて下さいませ。雑賀様、謙遜でも自信がないのでもありません」
「ほう…」
「雑賀!!!貴様!」
「い、石田様」
「これ以上これを愚弄するのは私が許さん!!!」
「落ち着いて!…っう!」
「?!」
「やれ、大事無いか?」
「すまん!当たったか?何処だ…見せてみろ」
「大丈夫です」
「痣になっている…すまん。左近!何処だ!!手桶に水を張れ。手拭いも」
「石田様…大丈夫ですから」
「動くな。じっとしていろ…腕と言っても跡になったら困る」
「…」
「月瀬殿」
「…雑賀様」
「?」
「きっと貴方様なら腕を振り払われた程度で…少し物が当たった程度で…怪我など致しませんでしょ?」
「ああ」
「当たり前だ。お前と雑賀では…おい、如何した?」
「だから、なのです。私は弱い。秀吉様の為戦うことすら出来ません」
「人には適材適所がある。貴方は私とは違うからな」
「ひひひ、ぬしは戦わぬとも我らが」
「違う…そういうことでは無いだろう!おい…」
「石田様」
「泣くな」
「申し訳…ありません。ふふふ。私は弱くていけませんね」
「?」
「貴方様の様に強く太閤殿下の為戦える方の奥に私など弱い者がなる訳にはまいりません」
「な?!」
「ひひひ。そういう事か」
「昔から何度も申し上げております。左腕には相応しい方を。…雑賀様」
「断る」
「つれない」
「私には誓い合った男がいるからな。あと姫も」
「鶴姫様も…ですが?残念」
「支えるものとして貴方は最高だと思うがな…ああそんな目で見ないでくれ」
「申し訳ありません。元来諦めが悪くて…石田様?あの、何方に?」
「刑部!」
「あいあい」
「しっかり冷やせ」
「え?!ああ。はい、ありがとうございます。あの、何方へ?」
「秀吉様の元だ。…私が帰ってくるまで此処にいろ。良いな」
「はい」








真を芯に清して進す 3









「あの子のそういうところがいじらしくて好きだけど…ふふふ。困ったね」
「半兵衛」
「ごめんよ秀吉。でも…あの三成君がだよ?家康君の離叛の際も彼女の前では語勢を荒げなかったし、何より憎悪に落ちずに済んだ。そういう意味でも彼をより人らしく大人にする。僕にとっての君である様に彼には大谷君がいるけどももう一人の精神的支柱となりつつあるのがね、実に興味深い。…あっ!そういう意味では無いよ?ただ、そう思うだけさ。興味深いのではなくて親心に近いのかもしれないね」
「我の養女として娶らせれば良い。出生にしても何ら困らんし…大和もあれのことは評価している。」
「そうだね…でも」
「?」
「もう少し様子を見てみよう。愛しい子らが如何なるのか。見守るのも大切だよ」

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