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変換なしの雑食夢

ran

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日本画家の三成

美しいと思いながら描くのは唯一人だと三成は言う。いろいろな女を描いたし描かされだが描きたいと思う女はこの世で一人だけだと、日本画の大家にして当代きっての美人画描きがそう言うのだ。きっとあの膨大な紙に描かれた女性だろうがわしには一度だって見せてはくれない。いや、わしだけではない。世の中の誰もが其れの発表を羨望しているのだ。彼が言う美人が如何なものかを見てみたいという欲求は萎む事も無く日に日に膨らんでいく。編集者でもあり学び舎の同級というのを口実に日参したが返事は変わらない。「あれが恥ずかしがる」ただ、それだけなのだ。あれとはわしや他の者が来たらアトリエの奥に引っ込ませる奥方の事だろう。大谷さんや左近曰くわしに見せるのは勿体無いそうだ。憤慨しそうな話だがわしを厭う目の前の男なら涼しい顔でやってしまう事だろう。現にわしが来た途端描いている絵を左近に片付けさせて飼い猫と遊び始めたのだからろくでなしと言いたいが原因がわしにも或る為言えはしない。学生時代。三成の絵を売っぱらった事を今でも根に持っている。まぁ若いというのは恐ろしい事だ。価値も知らずに二束三文で売ってしまうのだから






「お邪魔するよ…なんだ家康君が居たのか」
「あ、竹中殿。今度企画を」
「嫌だね。うちの茶器を売られてしまうと困るるからね。」
「半兵衛様。此方から参りましたのに」
「いやいいよ。姫さんの顔も見たかったし。…今は本宅かな?家康君居るし」
「棘のある言い方しないでください」
「今度の茶会の軸でございます。僭越ながら私が」
「僭越も何も。日本画の大家に毎回描いてもらうのだから有難い話だよ。秀吉も喜んでいるよ」
「秀吉様がですか?!」
「相も変わらずだな」
「黙れ!貴様に何がわかる」
「ふふふ。では会ってくるよ。またよるね。…家康君が帰ってくれるとここで会えるのだけどね」
「ひでぇ」
「妻は刑部の部屋にいます」
「ああ。もしこの馬鹿力が強行したとしても彼が居たら生きてここから出られないね。いい判断だ」
「竹中殿、わしの事嫌い?」
「三成君の絵を盗んで端た金にする輩は死ねばいいと思ってるよ」
「わし、もう帰るわ。三成」
「何だ」
「雑誌の表紙」
「断る」






ぱたんと扉を閉めて少し歩く。今急に引き返して垣根越しに除けば例の女を見る事が…いや今は本気で命が危うい。なればと時間を潰して夕刻前に行こう。辺りが薄暗くなった頃、垣根越しに中を覗く。変質者以外の何物でもない。が、飽くなき探究心のせいと言いたい。


じっと目をこらすと縁に出て花を生けている女性が見える。薄い藤色の着物を着ていて何かを話している様だがここからでは聞こえない。参ったなとおもいながら三成を見て刮目する。
あの、仏頂面の三成とは思えないほどに優しく笑っている。初めて見た。本当に初めて見た。彼女の「あなた」という声に我にかえる。柔らかで落ち着いた声だ。黒髪も艶やかで艶かしい。



「如何した?」
「今日はお疲れ遊ばされませんでしたか?」
「大事無い」
「ならようございました」
「お前は?」
「私は何もしておりませんよ」
「いや、お前はいてくれるだけでいい」
「あら。嬉しい」
「本当の事だ」
「ふふふ。あら、また描かれたのですか?私などより美しい方をお描き遊ばさないと」
「私が描きたいのはお前だけだ」
「美人画の大家であられるのに。発表出来ない絵を描いて…」
「嫌か?」
「いいえ。この瞬間はあなたは私を見てくださるでしょ?」
「いつもお前を見ているし想っているさ」
「…」
「如何した?」
「い、え。その恥ずかしい」
「…もう少し待て。描き切る。」
「三成様?」
「よし。左近!」
「へいへい!」
「左近殿ご苦労様です」
「奥方様。綺麗な花っすね!三成様、片付けしたら良いっすか?」
「ああ」
「ごめんなさいね」
「仕事っす!」
「刑部は?」
「害虫駆除っす!」
「そうか」
「あなた?」
「奥へ行こう。」
「はい?」
「…」







ぞくりとした。見つかっている。きっと後ろにある気配は




「ヒヒヒッ。命知らずよな」







日本画家の三成







「あら、外が騒がしいですね」
「思いの外大きな害虫だったのだろう」
「にしても刑部様は大事ありませんか?」
「安心しろ。きっと生き生きとしているだろうからな」
「?」

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