心を掴まれた女 三成短編 2017年06月11日 「おい」「…あら、石田様」「何をしている?」「干し野菜を作っております。今日は天気が良いですからね」「そうか」「何かご用ですか?」「今、暇か?」「いえ。夕食の仕込みがありますので」「…そう、か」「今日は良い白身の魚が手に入りました。楽しみにしてくださいませ」「ああ」「おい」「膳を出せ!!!平皿の支度は!」「はいっ!」「椀を出せ!ああ。それじゃ無い!」「こっちっすか!」「それだ!」「(…)」「味見てくだせぇ」「ん!いいよ。ああ。だしとくれ!」「はい!」「よし…あら?」「寝ていらっしゃいますね。さっきまで起きてたのに」「そうだね…掛物」「はい」「お疲れがたまっていらっしゃるのだろ?ほら。あんた達は仕事しな」「へい」「で」「?」「三成君とはどうだい?」「と、申しましても。」「好い仲なんだろ?」「は?」「違うのかい?」「違います。とても気にはかけていただいておりますが。出来ました」「美味しそうだね」「ありがとうございます」「で」「?」「本当のところ」「は?」「…本当に何でも無いの?」「当たり前です。下僕中の下僕です。そんな話ありえません」「そうか…あれだけ懐かれているから気がついていると思ったけどね」「?」「君の事を好いているってことさ」「そう、何でも恋愛にくっつけないで下さいませ」「他人のは楽しいものだよ」「お人が悪い」「ふふふ。で、」「まだございますか?」「当たり前だよ。君には聞きたいことが山積みさ」「明日の仕込みがあるのですが」「嘘付かない」「…そんなにお聞きになりたいこととは何で御座いますか?」「あのね」「はい」「君、何処か悪い?」「!」「顔色が悪いよ。君は化粧しないからすぐにわかる」「申し訳御座いません。決して、決してうつるようなものでは御座いません」「そこを気にしたわけでは無いよ。君が僕たちを暗殺」「?!」「する気ならとっくに毒を仕込むだろ?信用している。君の忠節も君の腕も」「…」「だから本当の事を教えて欲しい。…何処が悪いの?まさか風邪なんてことは無いだろう?」「痼があります」「胃の腑かな?」「はい」「そう」「竹中様?」「…僕の贔屓の医者に診てもらおう。少し待っていたまえ」「?!め、滅相もありません!」「治るかもしれないだろ!」「薬なんて!そんな…高価なもの私のような下僕にはもったい無い話で御座います」「其れを決めるのは僕だよ。君ではなくてね」「…竹中様」「…何?」「天命なので御座います。両親、兄弟皆死んでしまった私があなた様たちのお役に立てただけで…それだけで嬉しいのです」「馬鹿言わないで欲しいね。君は僕たちの…」「?」「大事な仲間だよ」「…」「?」「それを」「其れを?」「聞けただけで私の命に意義があったと」「…」「残りの命尽きるその日まで。誠心誠意お仕え致しそう言うとため息が聞こえる。ここの方は優しい。私のような女に気をかけて下さる。ここで生きてよかった。死ぬ、その瞬間まで。出来ればその最後まで。ここで仕えたいと思いながら退室する。明日は、何を食べていただこう。皆様が少しでも健やかでいられる食事を作って行きたい。心を掴まれた女「終わった…」「宴の膳はね。あとは追加に対応して…ん?」「石田様?!え?!宴の最中っすよ!?」「…?」「何か不備がありましたか?」「いや…」「なら」「私はいつも退席する。…美味かったと伝えに来ただけだ」「全部食べられましたか?」「…すまん」「いえ。慶讃の料理は多うございますから。」「…」「誰か掛物を」「いや」「?」「その、だ」「萩さーん!殿下がおかわりを所望されておいでです」「わかった。掛物をすぐに」「いや…」「い、しださま?」「何処か優れないのか?」「は?」「少し顔色が悪いように見えた」「張り切りすぎたので御座いますよ」「なら、いいが。すまん。炉前を借りる」「はい」「…」「うるさく無いようにしますが煩かったら言ってくださいね」「いや」「?」「萩殿の声は体に馴染む。…心地が良くてな」「は?!」「いつも通りで構わない。私が邪魔なら言ってくれ。」「滅相もありません」「?」「また済みましたら温かいものを作ります。出来たらお声をかけますので其れまでゆるりと」「ああ」 PR