44 佐和山見物編1 からんころん 番外編終 2015年11月19日 「三成様は?」「ひ、姫様?!如何したんっすか?」「いえ、この後の話を」「今はまずい?」「?」三成様の襖向こうから獣の様な息づかいと女の嬌声が聞こえる。ああ、湯屋では当たり前のことだと何かで書いていた気がするものの体が硬直して動けない。姫様と言って肩を叩かれた瞬間思わず体が跳ねた。「す、すいません!」「い、いや。俺こそ。い、今は」「今はお取り込み中の様ですから。…」「後で行く様に言いましょうか」「いいえ。これで決心がつきました。左近様」「はい」「お伝えください。私は一足先に大阪に帰ります。」「は?」「やはり、政務が気がかりですし。私は帰りますので、三成様は正月明けにご出仕をお願いいたします。」「な、何言ってるんすか?!!此処から大阪まで何日掛かると!」「船であっという間と聞いています。ですが馬で帰ろうかと」「…」「ではこれをお渡し下さいませ。」「嫌っす」「なら、挟んでおきます。よし、と」「三成様が悲しむっす」「…」「姫様」「本当に三成様が好きね。」「そりゃあ!」「父上の左右の腕が竹中様と三成様ならば、三成様のそれは大谷様と。左近様。貴方でしょうね。」「!」「裏切らず。彼の方ために命を投げ出すつもりでしょ?」「はい」「そういう貴方だからこそ。大谷様と肩を並べられるのしょうね。左近様」「…」「三成様をお願いします」「…姫様も」「私は私の役目を果たすまでどんなことがあっても生き続けなくてはなりません。たとえ貴方たちを見捨てる事になろうとも」「…」「ひどい顔。」「生れ付きっす」「では、さようなら」「!」「もう私は私という役割に戻るだけだ。女の私は此処に捨てていく。」「なん、で?!」「明日、早朝に立つ。ではな」からんころん「姫が大阪に?!なぜ言わなかった!!!」「言ったいった。左近も我も。しかしぬしは人語を解せぬようになっておったからのう。」「っ!」「今から追っても無駄よ無駄。」「一旦城に帰りましょう」「…」城に帰ると姫様を探すもののやはりいない。寝所にしていた部屋に入ると手つかずのままに並べられた着物と帯。化粧道具が所帯なさげに置かれてある。ふと文机に手紙がのっていて目を落とす。姫様の柔らかい字で私の名を書き記している。ただそれだけのことなのに尊く、愛しく思ってしまうこれを恋だというのだろうか?秀吉様でもなく半兵衛様でもない。姫様だけに感じるこの感情を持て余し、溢れさせては姫を傷つけてしまうだ。宿屋で拝した手紙には歌が1つ。初春の 咲きて誇るは 梅等ばを 手折りて愛でて 枯らして忘るる と書かれてあり、刑部に見せれば眉間にしわをよせられる。此処の文には礼謝罪が書かれたものになっていた。そして名残とて 急げし折の 花嵐 舞う美しさに えんを知るなりと書かれる。もう遅いのだろうか?散ってしまった花は二度と元には戻らないのだろうかと思案して静かに泣いた PR