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変換なしの雑食夢

ran

38 佐和山見物編 6

「…いつまでああしておくつもりですかね。」
「さて。」
「にしても。」
「ん?」
「うっとりした顔で梅を見る姫様をうっとりとした顔で見る三成様って…」
「ひひひ」
「怖いもの見たさってやつっすね」





ほうと息を吐く。美しい場所だと聞いていたが此処までとは思いもしなかった。美しく咲き誇る梅は盛りには程遠いのだがそれでも美しいと言わざる得ない。



「姫」
「あ、ああ。三成様。」
「…好きだな」
「ええ」
「…そうか」
「衣裳も梅なのですが、少し不思議なのです」
「?」
「妹の選ぶものとは違っていて」
「は?」
「今の流行りなのでしょうか?」
「…気に入らぬのか?」
「いえ。凄く気に入っています」
「…そうか」
「三成様?」
「いや、そのだ」
「?」
「何故そこまでの梅好きなのかと思っていただけだ。」
「私と妹は同室に暮らしていたのですが、その庭に美しい対の梅があって。皆で私を紅梅。妹を白梅と呼んでいましたので。あの頃は寒い時期に咲くこの花がいじらしくて好きでした。今は」
「?」
「いえ、何でもありません」
「如何した?」
「?」
「何故泣いている?」


きっと。そう紡いだ時に涙を掬われる。白い華奢な指は私と違って節くれ立っている。男の、何より武人の手だ。何も言わずじっとこちらを見てくる瞳は真っ直ぐで濁りがない。父上と竹中殿と刑部しか映さないこの目。私を見ないこの目を、欲してしまったのは何故だろう。酷い男だ。叩くし蹴るし。怒鳴るしきっとそのうち刀を向けられる日も来るだろう。それでも恋をし愛してしまったのだ。




「姫?」
「きっと梅のように生きたいのでしょうね」
「梅の様に?…歳寒三友か?」
「ええ」
「…私もそうありたいと思う」
「そうですか」
「ああ」
「三成様」
「ん?」





目を細めて見ないでほしい。女として扱わないでほしい。女の私が泣いているのだ。愛してほしいと。あなたの妻にしてほしいと。普通の女として生きたいと。切に欲してしまうのだ。


「それに」
「?」
「これが着納めです」
「…は?」
「これより私が生きていく道には女の着物より籠手と兵法。雅な遊びに興じ、季節の移ろいを愛でるより覇道を歩くために必要な知略と武勇を学び、鍛錬しなければなりません。」
「だが、」
「?」
「時折。こうして皆で旅に出て。その間だけでも」
「きっとそれは無理です。」
「無理?」
「貴方様は左腕としてその力を遺憾なく発揮することでしょう。大谷様と左近様は貴方のために。私は」
「姫」
「それらと外を繋ぐための捨て石にならなければなりません。それを痛切に感じています。」
「捨て石などになる必要はない!貴方は私が」
「いいえ。いいえ、三成様」
「…」
「私は守られるだけの人間ではいけないのです。私には腕がない。だから…」
「姫」
「腕と腕を組む橋渡しをしたいのです。それは、私にしかできないことです」
「和を調するのは貴方が確かに一番だ!だが、貴方は女だ。誰かと番い豊臣を守らなくてはいけない!」
「私は。きっと…」
「姫?」
「いいえ。何でもないのです。三成様」
「何もない顔ではないだろう!」
「貴方が左腕である以上。私の。私の…」
「泣くな。泣かないでくれ」





いつの間にか掴んだ着物を離して私は涙を拭う。拭って泣いたらスッキリいたしましたと言えば凶相に変わった三成様がいて笑ってしまう。


「今はこの安寧を楽しみましょう」
「私は」
「しっかり休んで遊んだら私の覚悟も決まりましょう」
「…」
「酷い眉間」
「貴方のせいだ」
「ごめんなさい。だって」
「?」



余りにも梅が美しかったのだものと言えば貴方が泣くのならもう二度来ないと唸られる。この言葉に甘美を見てはならない。そう思いながら私は彼の頬を撫でるのだった






からんころん 番外編






「姫ー!餅っすよ!」
「わぁ美味しそう」
「おい」
「はい。姫と三成様の分!」
「私はいらん」
「美味しいですよ」
「姫が食べろ。腹を空かすな」
「?」
「昔から腹を空かせると泣いていた」
「…そうでした?」
「機嫌が悪くなってなぁ。ぐずりよる。」
「…」
「なんだ?」
「あーん」
「食わん!」
「じゃあ左近さん」
「無理っす」
「2つは無理!大谷様は?」
「我は満腹よ」
「…」
「なんだ」
「あーん」
「…」
「三成様が左近様にあげて」
「は?」
「おい、待て!」
「あーあ。行っちゃた」
「やれ左近」
「ん?」
「三成はどうする気かのう?」
「さぁ。今まで通り。歯止めが効かなくなったら姉さん虐めて。甲斐甲斐しく姫様のそばで生きていくつもりじゃないっすか?」
「まぁ。そうよの」
「にしても可愛そうっすよ。はじめはただの息抜きが通ってたら、よく考えればこの後は戦戦!これからは女捨てて生きるためのけじめ旅行じゃ無いっすか」
「いわしゃるな」
「態々女の姿にさせなくても。二人とも可哀想っすよ」

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