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変換なしの雑食夢

ran

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28

「姫様はお出でにならないのでしょうか?」
「すまないね。何度も言ってはみたんだけれども。城を空っぽにはできないと言ってね。確かに一理あるし…。僕と秀吉だけでお邪魔するよ」
「?!何と見に余る光栄!不詳三成、その日を楽しみに致します」
「そうかい。僕も楽しみにしておくよ。」
「はい!」




意気揚々と半兵衛殿の部屋から退出する治部を見てああ、話を聞いたのだなぁとただ何となく思う。治部という男は矢張り、父上が居ればいいのだろう。先だってまで勧めては断ると言う私とのやりとりを思い出して一人笑うと小姓が驚いて私を見る。「いや、何。何でもないよ」と言って仕事に戻るともう興味はなくなったようで己が仕事をしていた。それで良い。それが本分だろう。言う程に誰も私に興味を示さないくらいが丁度良い


「おい…ああ。いないのか」
「やれ、姫…如何した?」
「新しい小姓なのだが…他者へつけてやってくれ」
「?」
「気性が荒くてな。治部なら矯正もできよう。私には侍女で十分だ」
「あいわかった。にしても」
「ん?」
「ヌシは行かぬのか?」
「佐和山の城か?ここを空にするわけにはいくまい」
「まぁ。そうよの」


煎餅とお茶を差し出すと刑部はやれ有り難やといつもの調子でいってくるが、内心では何と思っているのかと思いながらじっと見て肩をすくます。この人に讒言は効かんなぁとしみじみ思いながら



「父と竹中殿。刑部に治部。左近。これが正しい人選だろう?」
「何を言わしゃる。」
「私は行きたくないのだよ」
「左様か」
「左様左様」
「三成が悲しみよるよ」
「嘘をつくな。先程嬉しそうに退室しておったよ」
「…」
「此処は竹中殿の部屋からよう見えるようになっておってな。逆も然り。」
「そろそろ部屋替えをしてもらわなければのう」
「西の離れが良いなぁ。彼処は秋と春に美しいところ故」
「小姓共々合わせ伝えておく」
「ん」
「やれ、姫。」
「勘違いはして居らぬし、治部を軽んじてもおらんよ。」
「ぬ」
「ああ、湯治に行きたいなぁ」
「湯治にか」
「刑部も如何か?」
「ひひひ。行ければ共に行こう。が」
「そうよな。時がない」
「…姫」
「故に行く間がない。さぁ。この話は終わりだ」
「…ヌシの本心が聞きたかったがな」
「本心…か。なぁ刑部」
「ん?」
「少しずつ、生きにくくなってきた」
「左様か」
「生きるという事はそういう事だな」
「さて…」
「ふふふ。」
「ヌシは凶星に飲み込まれぬな」
「ん」






からんころん 番外編







山茶花が咲いたか。もう冬だな。そう思って庭木を見る。ちらちらと降る雪がもう冬が来たことを告げる。息が白い。


「姫様?!このような寒空の下何を」
「あ?ああ。治部か。休憩だ」
「早く中に入ってくださいませ。風邪を引いて」
「大事ないよ。さよに厚着をさせられている。後だな。」
「?」
「私の体の弱さは私の未熟さのせいだ。さよに辛く当たらないでくれ」
「それは、しかし」
「…これ以上、私を惨めにしないでくれ」
「惨めなど!貴方様は尊い方でございます!無二の方なれば」
「わかったわかった」
「…姫様」
「では退散いたそう。誰か熱い茶を。」
「…」
「梅の花はまだ咲かぬか。」
「梅、でございますか?」
「ああ。」
「何処よりか取り寄せましょう。姫様がお求めならば」
「態々手折ってか?くだらん」
「?」
「野に咲く草花を手折るのは慣れているか。」
「い、え。あの」
「頼むからておらないでくれ」
「はい。…申し訳ございません」
「?」
「御不快でございましたな」
「いや、いい。で、何の用だ」
「…我が城の宴餐の件」
「私は待機する。挙って城を留守にはできぬからな」
「ですが」
「それより」
「?」
「お茶だ。飲みなさい。」
「有難く」
「…他の方が参る。安心いたせ」
「日を替えて、」
「?」
「参っていただくわけには参りませぬか?」
「無理だな」
「…」
「師走は忙しい。」
「そう、でございました」
「私を呼べる時間があるのならばその分父上をお慰めして差し上げてくれ。」
「は」
「…言われるでもないだろうがな」
「姫様」
「ああ。私の小姓をそちらに回す。少々癖のあるものだが良い男だ。頼んだよ」
「なれど」
「刑部にも申したが私には侍女で十分だ」
「…」
「では頼んだよ」
「はい」

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