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変換なしの雑食夢

ran

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「姫様?急に如何致しました?」
「痛い」
「ひ、姫様?!」
「さよ、産婆を。侍童たちはいるか?」
「隣室に控えています。文を私に行かせますよ。ああ。頼む。後、三成。此方へ」
「はっ!」
(気づいていらっしゃったのね)
「父上と竹中殿に書状を」
「ですが」
「良いな、きちんと返事を貰ってきてくれ。いや何。そなたの足ならすぐだ」
「直ぐに戻ります!」
「…良いのですか?あのままなら産婆を殺しかねない気が」
「父上に抑えてもらうようお願いした。書状にはそう書いてある。」
「用意周到で」
「しかしだ」
「?」
「昨日よりしくしくしていたが真逆陣痛とは…」
「昨日?!真逆」
「ははは。あいたたたたた」
「誰か!産婆を早く!!!間隔が短い!!!」
「はいただいま。」
「姫様!!!」
「いや、ははは。いたたたたたたた。」




経験者の刑部ですらこんなに早いわけがなかろうと一言言う。先ほど痛いと言ったばかりであろうと。但し、相手は姫様なのだ。常識というのが欠落しておられる。現に、昨日より痛んでいたらしいといえば何とも言えない顔をされた。




「大谷様!」
「何だ?!」
「綱を!」
「あいわかった。やれ三成」
「な、なんだ。」
「そうそわそわするでないわ。まだ」
「破水してますから早く」
「…」




刑部と入れ替わりに半兵衛様が来られる。どうだいとおっしゃるので事の次第を説明すると一様な顔をされる。
取り敢えず、姫らしいよねと言われるので何とも言えなくなると、凄い音がした。




「な、」
「…やれ、腕の要らぬ男はおらぬか?」
「ど、」
「どういうことだい?」
「いきまれたら天井がのう…」
「姫様はご無事か?!」
「それは心配いらぬがおおそうよ。暗を生贄に綱代わりを」
「…」
「冗談よ。…にしても姫曰く力加減ができぬそうでな。掴むものがなければ辛かろう」
「では私が行く!」
「君なんて一捻りだよ。…秀吉?」
「我が行く。」
「は?」
「だ、だめだよ。君にもしものことがあれば。」
「後継者に腕をへし折られる吾ではないわ。良いか三成」
「は」
「そこで待っていろ。」








「父、上」
「手を出せ」
「力加減が」
「わかっている。今は産むことに集中しろ」
「は、い?!いたぁぁ!!!!痛い!」
「っ?!」
「つぅ…!!まだか?!」
「まだです」
「おのれ!早々と母の前に出てこぬか!」
「…」
「いたいっ!あー!!!いたいわ!!!」
「姫」
「いたー!」
「落ち着け」
「痛い!」
「故にだ。行くぞ」
「??あー!!!」
「今だ。いきめ」
「んー!!!」
「姫様!頭が見えてきましたよ!」
「はっはっはっ。」
「しっかり休め。次が来る。」
「んー!!!!!」
「よし、今だ」
「んー!!!!!」











秀吉様がお出でてからどのくらいの時間が経っただろうか?何の前触れもなく赤子の声が聞こえて慌ただしくなる。



「い、石田様!」
「姫様は?!ご無事か?!!」
「はい!母子ともにご無事でございます!」
「やれ、どちらよ。」
「お世継ぎ様にございます!」
「そうかい!!よくやっ…三成君?」
「ご無事で、良かった」
「やれ泣くでないわ。三成。」
「本当だよ僕だって…」
「軍師殿も」
「…皆様。何を泣いているのですか???」
「姉上」
「姫がお呼びですよ。」
「姫様!」






ばたりと障子を開けると草臥れた顔の秀吉様がいらっしゃって土下座をする。よかったなとおっしゃって姫の方へと促される。




「治部や治部」
「姫様」
「心配かけたなぁ。」
「ありがとうございます。」
「男の子だ」
「はい」
「顔は其方似だが。髪は私だな。ふふふ。不思議だ」
「私の、子?」
「不服か」
「いえ…これ以上の幸福は有りません。」
「三成。…他人行儀はもういい。母と父だ。」
「姫」
「ん?」
「大事ないか?」
「ん」
「良くやった」
「頑張ったよ」
「聡い子になろう」
「ほら、父上ですよ」










からんころん







「ん…。三成?」
「起きなくてもいい。まだ、体を休めておけ。」
「ありがとう。名前は?」
「佐吉がいいとおっしゃっていた」
「懐かしいわ」
「私に似ているそうだ」
「ええ。あまり泣かないところは」
「?」
「赤子なのに。はぁ」
「なぜため息をつく」
「殲滅斬滅言わぬか心配だわ」

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