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変換なしの雑食夢

ran

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39

「…」
「何方へ」
「治部や。仕事は如何した」
「終えました。」
「そなた事務処理能力が時々怖くなるな。今から散歩に出ようと思ってな」
「そのような時はお声をかけてくださいとあれほど」
「歩かせぬではないか」
「危のうございます」
「お産が重くなる。」
「ですが」
「あと小太郎定期連絡があってな」
「…」
「その顔をするから言いたくなかったのだ」
「私も行きます」





そう言って歩く。やはり歩きにくいなぁと思っていたら背中に向けられた殺気がたじろぐ。仕方がなかろう。そなたの子が居るのだと言えば何とも言えない顔になる。そう言えば刑部は神輿に乗せようとしてあれに説教をくろうたらしいなと笑うとその手があったかと言わんばかりの顔をするので丁重に断っておく。


「なぁ治部っおっと!」
「お足元にお気をつけください」
「ありがとう」
「いえ」
「この様な感じになるとは思わなんだな」
「は?」
「そなたと私だ」
「…」
「若い時分の其方は誠、ひどい男であったからなぁ。叫ぶは泣かすは殴るは打つは。本にろくでなしだった」
「返す言葉もありません」
「その上、未だに父上の方に天秤が傾く。」
「その様な」
「良い。もう世辞は聞きたくないからな。それに私も他意を混ぜずに言っている。…其方はそれだから其方なのだ。故に私の下について働くなど考えられんだろうしなぁ」
「…」
「私は其方の妻にもなれん。父上の代わりにもなれん。すまんな。不甲斐ない私を許してくれ」
「姫様」
「さて、着いた。小太郎」





何か言いたげな治部を振り切り、私は庭に出ると黒羽とともに小太郎が現れる。治部も小太郎に関しては信用しているらしいが…ギラギラとした殺気は頂けない。部屋に帰るか殺気をしまうかと尋ねると渋々ながら殺気を仕舞われた。





「皆様息災か?…なら良かった」
「…」
「すまん。手間をかけさせた。で、戦にはならなくて済みそうか?」
「…」
「助かった。ありがとう。北条殿は?」
「…」
「まだ何方かわからんのだ。気がはやいなぁ。じじ様の様だな」
「…」
「大ジジ様と呼ばずと言っておいてくれ。本当に良くしてくださる。感謝してもしたりないとお伝えしてくれ。小太郎も」
「?」
「ありがとう。」
「…」
「でだ。腕を出せ」
「?!」
「怪我をしているだろう?本に無理をさせた。治部」
「は」
「包帯と薬を持ってきてくれ。」
「…姫様を頼むぞ」



そう言って走っていくから笑ってしまう。小太郎もくくくと笑っているので過保護の磨きがかかってなと付け加える。




「仲が良さそうだ」
「そうか?そうだな。」
「?」
「嵐の前の静けさの様な気がしてならん。」
「自虐的すぎだな」
「それだけ振り回されたということだ。治部は」
「姫」
「私ではダメな男でな。いつもそれで泣かされた。故にな。あまり求めぬことにしたのだよ」
「幸せか」
「ああ。私には十分だ」
「なら、良いが」








そんなやり取りをして薄く笑うと頭を撫でられる。自衛のようなものだから口に出すほど酷くないと言えば頷かれた。自衛なのだ。
女しての幸せに余りにも遠かった故の戸惑いなら良いのだがなと言って私は走ってくる治部を静かに見つめたのだった。




からんころん




「最近だが、姫が少し暗くないか?」
「…ぬしもそう思うか?」
「風魔殿も心配されていた。産婆は?」
「初産故に心配事が尽きぬのであろう。」
「なら良いが。まるで」
「?」
「世を見限っているように見える時がある」
「今までが今までだったから、急な幸せが虚無に見えるのであろう。」
「大丈夫か?」
「ヒヒヒ。拗らせねば良いがな」

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