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変換なしの雑食夢

ran

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白雲の果て

私の仕えている殿様の名は石田様と申します。其れは其れは苛烈で不手際の為に折檻を受けた者の数は新参者の私ですら両の手を三巡しても足りないほど知っております。故に辞めていくものも後を絶ちませんし、噂を聞いてお仕えしたいというものも相当の理由がなければ居ないのが現状です。
私といえば何度か折檻を受けたものの未だこの大阪にて仕えております。それはひとえにご恩に報いる一念のためです。
その昔。私は戦さ場で死にかけているところを助けられました。石田様ではなく、島様にでございます。島様への御恩を返しているうちにいつの間にやら大谷様の雑用侍女として、ひいては石田様の雑用侍女として働くご縁を頂きました。大谷様は私の顔を見ては良く不幸は女子やらそういう言葉をお掛け下さいますが私としては不思議でなりません。屋根のついた日の本一安全な場所でお仕えできる自分が幸せでありはしても不幸ではないはずなのです。そう言うと癖のある笑で一頻り笑った後、幸せな頭をしておるなとまた笑われるのでございます。
そして、私に石田様の雑用侍女も兼務するようにとお告げ遊ばしました。



「藤ちゃん」
「島様」
「その堅苦しい挨拶やめよって!」
「命の恩人ですもの。…怪我」
「え?あー…へへっ。三成様に稽古をつけてもらってたのよ。」
「少し沁みますよ」
「あーがと。…ん?」
「?」
「あれって」
「ああ。奥方様の…いつもの」
「次は随分細い男だな」
「楽師のようでございますよ。動かないで」
「いてて。色狂いの嫁さんねぇ。三成様に相応しくないって」
「私たちでどうこういうものでもありませんよ。…島様」
「そうだけど!…まぁ三成様に至っては寝所に一度も行ったことないって話だし。」
「島様」
「刑部さんが黙っているとも思えねぇし」
「島様!」
「ん?」
「やれ、我が何と」
「げっ?!ってー!!!」
「要らぬ詮索は身を滅ぼすは世の常よ…ひひっ。なぁ藤」
「はい」
「ひでっ!命の恩人に」
「何度か合図を送っていたのになぁ」
「へ?そうなの」
「…次はわかりやすくいたします」
「聡い女子よ」
「っていうか!」
「ん?」
「あれ!」
「ひ?やれ、雌豚が如何した?」
「雌?!一応三成様の奥方っすよ?!」
「知らぬ知らぬ。畜生の行いで一喜一憂する間は我にはない」
「ひでー!…ん?藤ちゃんどったの?」
「いえ」
「藤?」
「…石田様はお辛くないのでしょうか?」
「三成様が?」
「縁あってご夫婦に御成遊ばしたのに。」
「そういう機微がわかるやつではなかろ?」
「ですが」
「戦略結婚とはそう言うものよ。」
「なれば」
「?」
「いつかあのお方を支えてくださる方がお側にお仕えできますよう、お祈り致します」
「ひ?」
「藤ちゃんらしいね。」
「ですけれどもお二人がおられますから大丈夫でございますね」
「…ひひひ。人の心配をする前に主とてもう年頃よ」
「そうっすね。藤ちゃん良い人いんの?」
「いません。」
「はてさて我が良き縁を見つけてこようなぁ」
「いえ。」
「?」
「私は、命の恩人である島様とここに置いてくださるよう働きかけていただいた大谷様。そのお二人の大切な方であられる石田様のご恩に報いたいのです」
「ひひひっ。誰とも添わぬか」
「出来れば最期までこちらに置いていただければ」



「藤!」




「やれ、三成」
「刑部。藤をみなかったか?」
「私はここに」
「何をしていた!」
「島様の手当てを」
「ひひひ。主の稽古は苛烈故」
「ふん!」
「御用でございますか?」
「墨をすれ」
「あ!俺がやるっす!」
「貴様の墨は濃淡がばらついて使えん!」
「乱暴なのよ。…藤」
「お手伝いに参ります。その後、包帯を替えます。大谷様」
「まだ替えていなかったのか?」
「何時も巡が悪くて…申し訳ありません」
「刑部」
「ひひひ。」
「先に済ませろ。良いな」
「はい」
「主は本に不幸よなぁ」
「?」
「我の呪われた身に触れるか」
「何をおっしゃいますか」
「…」
「先ほど申しました様に御三方に支えられるのは私の望みでございます。幸せなことであって不幸ではございません」
「相も変わらず幸せな頭を持っておるなぁ」
「気温も高くなりましたから毎日替えないと…直ぐに替えます。」
「あいあい。では三成。暫時借りる」
「わかっている。藤」
「はい」
「…」
「?」
「貴様はその命が尽きるまで尽くせ。拒否は認めない」
「!」
「わかったな」
「はい」
「…ならば良い。行け」
「はてさて。本に機微のわからぬ二人よな」
「本当っすね」







白雲の果て









縁故故致し方なかろうと仰ると大谷様は煙管箱を寄せられる。白い煙の果てを見ていれば藤と名前を呼ばれるので私は包帯を片付けながら返事をする。奥方様は太閤殿下の縁故。所謂後継者の証として嫁がれてきた方なのだ。そのため何をしても離縁はできないし、干渉してはならないと暗に言われている様で私は小さくうなづく。



「あれが阿婆擦れなのは太閤賢人共に知っておるが他におらぬ故仕方がないのよ。ひひひっ。苦虫を噛む様に我らに言え賢人の顔をぬしも見ておればようようわかっただろうなぁ」
「私は尽くすのみですから」
「左様か」
「はい…大谷様?」
「主は孕みたくはないのか?」
「は?」
「三成の子よ」
「…」
「ひひひ。驚いておるなぁ」
「呆れているのです。」
「冗談ではないのだがなぁ」
「奥方様が御許し遊ばされません」
「許せば良いと?」
「大谷様」
「やれ膨れるな。あの三成が主には折檻も致さぬからなぁ。もしやと思うてな」
「最初はお叱り遊ばして御いででした」
「左様か」
「今は私しかおりません故諦められたのやもしれません」
「ひひひ。」
「?」
「まぁ、いい。さて我の方は終わった故三成の方へいかしゃれ」
「はい」






石田様の部屋に大谷様も用があったらしく二人でお部屋に向かう。







「石田様」
「藤か」
「我もおる」
「早く入れ」
「はい…!」
「やれ、三成。嵐にでもあったか?」
「奥だ」
「直ぐに片付けます」
「頼む」
「また如何した?」
「知らん!」
「まぁ、いつもの癇癪か。藤」
「はい」
「彼方の侍女頭に話をつけるわ。後で共に参るぞ」
「はい」
「何故藤を連れて行く?」
「藤は表の侍女頭故。抗議の折は共に参るのよ。我だけではあの女狐は腰が折れる」
「私は座っておりますだけですが…」
「主の無表情が良く効くのよ」
「石田様」
「?」
「書類が…」
「っち」
「後で我も手伝う。…いや、我のみで行ってくる。あまりの態度なら賢人に言うが良いか?」
「好きにしろ」
「本に…主のことよ。まぁ良い。藤、やはり主は三成の手伝いをいたせ」
「はい」
「…」
「石田様。文机を次の間に用意いたします」
「ああ」
「しばしお待ちくださいませ。少し席を外します」
「急げ」
「はい」





「よく働く子よの」
「知らん」
「そろそろ年頃故。縁組…ひひひっ。すまぬすまぬ。」
「…刑部」
「主を揶揄うのは命懸けよの。ここに来て3年。我とて賢人とて疑ってはおらん故安心いたせ」
「ふん」
「?」
「あれが私を想うと思うか?」
「ひひ」
「それこそ無理な話だ」

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