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変換なしの雑食夢

ran

16

「あら?また」
「さよ?」
「花が。」
「誰でしょうか?」
「ふふふ。可愛らしいことをするものですね。」
「?」
「にしても姫様。石田様の文はお書きになりましたか?」
「もう終わります」
「見せて頂いても?」
「怪我も順調なればご心配には及びませぬ。されども粗忽な姿にてご不快に思われましょう故、見舞いは結構ですとしか書いていませんよ。左手なので悪筆ですから。嫌気がさしてもう手紙も終ましょう」
「そうだと良いのですがね。ああ、姫様」
「はい」
「薬の時間ですよ」
「う…」
「早く飲んで下さいませ。私は手紙を渡してまいります。」
「お願いいたします」




ぱたんと閉められた戸を見てため息をつく。美味しくなさそうだなあ。と一気に飲むとやはり美味しくなくて嫌になる。
此れから嫌なこと辛いことが沢山あるだろう。琴に舞。和歌を詠む琴もなくなるのだろうし。何より、普通の女としての幸せは得られないだろう。ここにきて傷だらけだ。誰も結婚したいとは思ってくれないだろう。と思案して湯呑みを置く。本当に嫌になってしまう。




「お父様。お母様」



お逢いしたいと言えばきっと打たれるのだろう。父と母に何かされてしまうかもしれない。私が我慢しなければと涙を拭う。後継者として必要な時間はどのくらいだろう。お父様が生きておられる間に城に帰れるだろうか。帰れるわけはないか。きっと帰る時は死んだ時だ。お母様がそう仰っていてお泣きになったのだから。傀儡の後継者。そう言って





「お前も人の都合で手おられて可哀想に。」





山茶花が哀れに見えるのはそこに自分を見ているからだろう。
くすくす笑い花を抱いて眠るのだった







からんころん番外編






「顔にも?!」
「だましゃれ。起きるわ」
「ぐう…」
「主は嫌われておる故。そこからはいりゃしゃるな」
「刑部」
「ん?」
「初陣だ、が」
「先鋒よ」
「?!」
「暴れるでない」
「初陣で先鋒とは!?無事にご帰還されると思うのか?」
「主の拝し奉る太閤殿下と軍師殿の偈よ。やれ、三成歯ぎしりが耳障りよ」
「刑部」
「心配ならば奏してみよ。或いはがあろう」
「心配してしたりない。私は自分が思っている以上にこの方を大切に思っているらしい」
「らしいか。それこそ。主らしい」
「だが、身分が違う。」
「…そうよの」
「いくら欲しても得られぬ。明星の様な方だ」
「主も娶りたいと思うのか?人の娘を」
「出なければ、抱いて動かん」
(若紫…?!)
「ただこの方は唯一にして無二の存在。私より強い方だ」
「ひひひ。剣速が主の方が早く鋭い故。人には向き不向きがある。居合術では主が勝つが他なればわからんよ。何より、棒術、徒手術は誰も勝てぬ。姫はそちらが向いておるのだろう」
「…そうか」
「ん?」
「私の短慮のせいで。この短気、どうにかならんか?」
「気の長い主は主ではない。が、そうよな。良い加減にせねば…ん?」
「如何した?!姫様になにかあったのか???」
「いや、山茶花?」
「!?」
「そう言えばさよ殿が花を置いていくものが…やれ三成。顔が赤い」
「そう、か。抱い、て」
「主もほとほと呆れるほどに不器用な男よの」

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